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第二章・8
「蓮、と呼んでも?」
「は、はい」
「蓮。君は、私の推しだ。推しには、いつも堂々と輝いていて欲しい」
「でも、僕は。僕なんか……」
巴は蓮の返事に、小さく笑った。
「ほら、また言う」
でも、と言うのも、止しなさい、と巴は言う。
「過去、君はいろんな辛い目に遭って来たんだろう。だからと言って、今を楽しんじゃいけない、ということはない」
今は、今。
「今自分が、どう立つか。それが大切なんじゃないのかな?」
「あ、ありがとうございます」
蓮の瞳からは、涙がどっと沸いてきた。
嬉しい。
こんなに前向きな、優しい励ましを受けたのは、初めて。
「すまない。泣かせてしまったな」
「いいえ。僕こそ、ごめんなさい」
「さ、食べよう。お茶も、冷めてしまう」
「はい」
初めて食べる寿司は、蓮の胃を喜ばせた。
滋養になって、全身に満ちた。
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