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第二章・9
「蓮、と呼んでしまった」
マンションを出て社に戻った巴は、社長室で一人頬を緩めていた。
あの、泣き顔。
清い涙。
「……写真に収めたかった」
だが、泣いている子を撮るほど、自分は変態ではないつもりだ。
私用パソコンで、アダルトサイトを開く。
そこには、先だって撮った海辺の蓮が笑っていた。
恥じらいのある、初々しい姿。
エロティックな衣装を着けているが、そこには汚れきっていない色香があった。
画像は、厳選された10枚程度だった。
「没になった画像もたくさんあるはずだな」
後で五木に、譲ってもらおう。
そう決めて、巴はパソコンを閉じた。
本当は、一日中でも蓮の画像を眺めていたいところだ。
「しかし、推し活には金が要る」
金のために、というより、蓮のために働かねばならないのだ。
巴は業務用パソコンを開き、午後の仕事に取り掛かった。
やけにはかどるのは、蓮のおかげだった。
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