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第五章 恋

 巴の腕に抱かれたまま、その胸に顔をうずめたまま、蓮は言った。 「僕も、巴さんのことが好きです。大好きです」  だから。 「……抱いてくれませんか? 今夜、ここで」  巴の腕の力が、ふと抜けた。 「蓮、やけを起こしちゃいけない」 「自棄なんかじゃ、ありません」  巴は蓮の両肩に手を置いて、その目を見つめた。  涙は、もう乾いている。  その眼差しは、真剣にこちらを向いていた。 「僕、お仕事でエッチする前に、本当に好きな人と過ごしたいんです」 「私なんかで、いいのか?」 「巴さんが、いいんです」  そっと、蓮は背伸びをした。  二人の唇が、静かに重なった。

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