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第七章・7

「映画の話を持って行ったはいいが」  巴は、デスクの写真を眺めて溜息をついた。 「蓮に、なかなか会えなくなってしまった」  なにせ彼は、いまや俳優の卵。  映画で花開くため、特訓中で多忙なのだ。  ジムに通い体力をつけ、芸能スクールに通い演技力を身に着け。  エステで体を磨き、ヨガで精神修養までしている。 「ジムは私と同じなので、そこで会うことができるが」  それでも、お喋りばかりしているわけにはいかない。  メニューは違う二人なので、離れたところでトレーニングだ。  時折目線を寄こすと、一生懸命体を動かしている蓮の姿がある。 「推しに輝く汗を見ることは、素敵ではあるのだが」  それにしては、なかなか体のできない蓮だ。  細くて華奢な線は、いつまで経っても改善しない。  ある日、巴は蓮に訊ねてみた。

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