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第5話 関係ないと思っていた

 オメガとかアルファとか、そんなもの俺には関係ない話だと思っていた。  俺は一般人(ベータ)だ。だから、大学生になったらかわいい子に出会って恋をして……なんてことを考えていた。  大学が始まって一か月少々。友人もできて、それなりに楽しく過ごせていたと思っていた。  なのに。 「う、あ……」  熱い楔が、俺の身体を貫いている。  大きなベッドの上で俺を組み敷いているのは秋谷千早。俺とは高校からの付き合いで、友人でそして、アルファ。  俺よりも幾分背が高く、顔もいいしいくらでも相手はいるだろうに、こいつは何故か俺を抱くことを選んだ。  考えてもわけがわかんねー。   「お前が運命の番(オメガ)の身代わりになれ」  そう言って俺をマンションに連れ込んだ千早は、二度目の行為に及んでいた。  アルファって絶倫だとかネットに書いてあったっけ?  だからオメガも、何度も欲しがるって書いてあったな。  でも俺はベータだ。  そもそも俺の後孔は、ペニスを受け入れるために出来ていない。  だから千早のペニスを全部受け入れることができないが、それでも彼は満足そうに笑っている。  そもそもこの行為に及ぶ前に準備が必要だった。  散々愛撫された後、風呂に連れて行かれて腹の中を綺麗にされて。  あれは屈辱としか言いようのない行為だった。  なのに俺は、逃げ出すこともできず千早を受け入れている。  最初はうつ伏せで抱かれて、今度は正常位。  千早は喘ぐ俺を見下ろし、満足げに笑いながら俺の身体を揺らしている。  この狂った時間はあとどれくらい続くんだろうか? 「ここもっと拡げないとな、琳太郎。どれ位で入るようになるかなあ」  言葉と共にぐい、と奥まで差し込まれ、俺は涙を流しながら声を上げた。 「あ……あぁ……!」  こんなに腹が苦しいのに、こんなに奥まで入ってるのにまだ全部じゃないのかよ?  千早は浅いところまで引き抜いた後、前立腺を狙い腰を進める。  そこばかり責められると、俺は頭がおかしくなってしまいそうだ。 「う、あ、あ、あ……そこ、やだぁ……!」 「何が嫌なんだよ、琳太郎? 中は嬉しそうに締め付けてくるぜ?」 「そんなわけ……あぁ!」  千早のペニスは俺の奥の奥までこじ開けるかのように、無理やり侵入してくる。  痛いのか、気持ちいいのか、俺は訳が分からなくなっていた。 「結腸までは届くはずなんだよ。なのにそこまではまだ入んないから。でもそうなるまでは時間かかるだろうな。まあ、幸い週末だし、時間は沢山ある」  なんか今はとんでもないこと言わなかったか?  俺は明日バイトだ! 「ん……あ、あ、千早……」  抗議したいのに、身体を揺さぶられて出る声は喘ぎ声ばかりだった。  なんで、こうなったんだ?  アルファだとかオメガだとか、俺には関係ない話だったはずなのに。  千早は前立腺を刺激し、そのたびに俺の視界は白く染まり腰が跳ねた。   「苦し……千早、もう、無理……」 「俺はまだ満足してないんだけどな」  俺は千早に何度イかされたかわからない。  けれど千早は一度しかイってない。  ずるいだろそんなの!  俺だけなんでこんなことに……!  涙で霞む視界に、千早の顔が近づいてくるのがわかる。千早は俺に唇を重ね、唾液を混ぜるかのように舌が口の中を動き回り、舌を絡め取り吸い上げていく。  キスでも俺の頭はおかしくなりそうだ。  いや、すでにおかしくなっているかもしれない。  開いたままの窓から差し込む太陽はすでに傾き始め、時間の経過を教えてくれる。  たぶん、この行為が始まってから二時間は経っているんじゃないだろうか。  いったいいつ解放されるんだ?  ……いったいどうしたら、千早は満足してくれる?  唇が離れ、唾液が銀色の糸を繋ぐ。  キスに酔った俺は、思わず声を漏らした。   「あ……」 「何、その声? キスがそんなに気持ちいいの? 琳太郎、もしかして初めて?」  からかうような声音で言い、千早は俺の乳首を指で摘んだ。 「はぅっ!」  痛いはずなのに、その中に甘いしびれを感じてしまう。 「ここも、いじれば大きくなるんだぜ、琳太郎。そのうち乳首でイけるようになるかもな」  うっとりと言い、千早は腰を激しく打ち付けた。  乳首を大きくするとか、こいつとんでもないことばかり言ってないか、今日? 「あぁ……! あ、あ、い、だめぇ、また、クルからぁ!」  首を振りながら千早に訴えるが、腰の動きは止まらずそして、 「イけよ、琳太郎。俺の名前呼んでな」  と言い、容赦なく腰を打ち付けた。 「あ、あ、あ……千早ちはや、もう、イくイく……!」  言われた通り、千早の名前を呼びながら俺は背を反らし、薄くなったであろう精液を吐き出した。 「あぁ……すごい締め付け……俺も、出る……」  息を詰まらせそして、千早は動きを止めた。  あぁ……終わった。  これで解放されるだろうか。  ぼんやりと天井を見つめていると、ずるり、と千早がペニスを引き抜く。  そしてタオルで俺の腰を拭くと、俺に向かって手を差し出した。 「風呂、入るぞ」  反論は許さない。  そんな声音で千早が言うので俺は腕を持ち上げ、千早の手を掴んだ。  どうやらまだ、俺は解放はされないようだった。

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