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第10話 愛してやる?

 カーテンの開いた窓の外では雨が降り出していた。  起きたときは確か晴れ間がのぞいていたはずなのに。  天気はとても気まぐれだ。  雨音をかすかに聞きながら、俺は千早に口づけられていた。  重なった唇の隙間から、舌がすぐに侵入してくる。  今はこいつに従うしかないのか?  偽物の番。  大学を卒業するまでの間、俺はこいつに抱かれる毎日を過ごすのだろうか?  その事実を、受け入れきれない自分がいる。  千早は角度を変えて俺の口の中を舐め、舌を絡め取り吸い上げた。 「ち、は……や……」  キスの合間に名を呼ぶと、千早は俺の顔を見つめて妖しく笑う。 「その顔、発情したオメガみたいだな。お前素質あるよ」 「な、なに言って……」 「あぁ、今どんな顔してるのかわかんないもんな。今度ここに、鏡を用意するか。そうしたら全部見えるもんな」  そして千早は俺の顎から手を離し、その手を俺の胸にあてそのままベッドに押し倒した。  あぁ、始まるんだ。  狂った時間が。   「鏡ってお前、何言って……」 「自分がどんな顔して俺に抱かれてるか、興味ない?」  いたずらっ子のような笑みを浮かべて言いながら、彼はTシャツを脱いだ。  一方俺は、下半身だけ裸で上にTシャツを着ているだけだ。 「そ、そ、そんなの興味あるわけ……」 「本当に、ないの?」  首を傾げて言う千早に、俺は何度も頷いて見せる。  そんなの見たいなんて思わない。  ……そんな恥ずかしすぎる事、できるわけがない。 「そこまで嫌がられるとやりたくなっちゃうなあ」  言いながら千早は俺に覆いかぶさると、また、キスをしてきた。  舌を絡ませあい、唾液を混ぜ合う口付けは息苦しさよりも気持ちよさのほうが勝る。  酸欠か、それとも快楽なのか。  口が離れたとき俺は、声を漏らした。 「あぁ……」 「ははは、ほんとお前、素質あるよ。早くお前の中に挿れて、ぐちゃぐちゃにしてやりたい」  とんでもないことをうっとりとした声音で言い、千早は玩具を脇に置いて俺の着ているTシャツを捲り上げると乳首をそっと撫でた。 「あ……」  口づけながら、千早は俺の胸を撫で、左の乳首を指でつまむ。  強弱をつけて胸を刺激しながら、千早は俺の口の中を蹂躙していった。   「ン……ち、はや……」  唇が離れたとき名を呼ぶと、千早は優しい笑みを浮かべて言った。 「今日も明日も、たくさん愛してやるよ、琳太郎?」  愛してやる。  そんなの偽りだろうに。  千早は胸に口づけを落とし右の乳首をぺろり、と舐めた。  舌でころころと転がし、軽く歯を立てる。  するとそこからじわりと痺れが広がり俺は声を漏らした。 「あ……」  乳首で気持ちよくなってるのか、俺?  舌は乳首を舐め回した後、徐々に腹へと下りていく。  手も乳首から腹、そして股の間へと下り、硬くなりはじめたペニスに触れた。 「ひっ……」  ペニスに触られたことで俺は思わず腰をひいて逃げようとしてしまう。  でも千早に乗られている状態で逃げられるはずもなく、俺はされるがままになるしかなかった。  手がペニスを軽く握り、ゆっくりと上下に動きだす。 「う、あぁ……」 「先走りでびしょびしょだな、ここ」  そりゃそうもなるだろう。  そんなところ人に触られて、平静でいられるわけがない。  千早は顔を上げ俺の反応を伺いながら、ペニスを扱きあげていく。   「もう、ガチガチじゃないか、琳太郎。これじゃあ、身がもたないぞ?」 「ん……だってぇ、千早が、触るからあ……」 「これで出すなよ? まだ先、長いんだから」 「む、無茶言うな……!」  俺は首を横に振りながら抗議の声を上げる。  すると千早は俺のモノから手を離し、 「仕方ないな」  と、残念そうな声で言った。  え、終わり?  それはそれで、俺の身体が辛い。  イきたいのに、イかせてもらえないとか鬼かよ……  千早は俺から離れると、うつ伏せになって尻を上げるように命令してきた。  あぁ、中に挿れられるのか、あれを。  そう思うと、心の中に悦びが溢れてくる。  ……ってあれ? 俺、嬉しいと思ってる?  まさか、千早に抱かれるのを心待ちにしているとか?  ンなわけあるかよ。  俺は……ただの身代わりなんだ。昨日と今日でそんな気持ちになれるわけがない。  自分の中にわずかに生まれた感情を押し殺し、俺は千早に言われた通り、うつ伏せになり尻を高く上げた。  彼に、すべてをさらけ出すようで正直恥ずかしい。   千早は俺の双丘を撫でまわした後、後孔を指でなぞりながら言った。   「ここ、ぱっくり口が開いてるなあ。これならすぐに入りそうだ」  言いながら千早は俺の後孔にローションを塗り込んでいく。指が中に入るたびに、ぐちゅり、と卑猥な音をたてる。 「ん……あ……」 「もう二本入った。これならすんなり入るだろうな」    声と共に指が抜かれ、俺は息を飲む。  さっきのアレを挿れられるのか……?  つぷ……と、先端が入ってくるのを感じ、俺は息をつく。  ゆっくりと、俺の様子を伺うようにソレは内壁を進みそして、先端が前立腺に触れた。  その瞬間、びりびりと電気のようなものが身体中を駆け巡り、俺は声を上げた。 「あぁ!」 「ここ、気持ちいいだろ? これからもっと良くなる」  その言葉の意味を、俺はすぐに知ることになる。  中が熱い。  後孔の入り口や内壁が熱を帯び、じくじくとした痛みを感じる。   「何、これ……」 「ローションだよ。中、熱くて痒くし、仕方ないだろう?」 「やだぁ……中、あっついー!」  玩具が俺の中を蠢き、前立腺だけでなく内壁を刺激する。  もっと欲しい。  中を掻いて、ぐちゃぐちゃにしてほしい。じゃないと俺、変になる。 「もっと、中掻いてよぉ。千早、中、もっと!」  そう懇願すると、千早は玩具を激しく動かし始めた。 「あ、あ、あ、いい、いっちゃう、いっちゃうよぉ……!」  中を抉られるたびに甘い痺れが身体中を駆け巡り、視界がチカチカと点滅しだす。  俺はぎゅっと拳を握りしめ、唾液を漏らし喘ぎ続けた。 「あう、あ、あ、イくう、イくからぁ!」  そう叫ぶと、不意に玩具が引き抜かれてしまった。  な、な、な、なんで?  なんでやめちゃうの?  戸惑っていると、指が後孔を撫でた。   「ひっ……」 「ここ、昨日よりもだいぶ拡がったな。これならすんなり入りそうだ」 「え? あ……」  千早が俺の腰を掴みそして、熱い楔が俺の中に入ってきた。  玩具の比にならない質量のモノが内壁を抉り、深く入り込んでくる。  昨日よりも深い。   「あぁ、やっぱりまだ全部は無理か」  言いながら、千早は一度腰をひくと、一気に奥へと侵入してきた。 「ひ、あ……」 「あぁ……気持ちいいな、お前の中。絡みついて離さない」 「う、あ、あ……」 「慣れればもっと、いい夢みられるぜ?」  笑いながら言い、千早は徐々に腰の動きを早めていった。  繋がったところからぐちゅぐちゅと水音が響き、パンパン、と肉がぶつかり合う音が聞こえてくる。  その音にも俺は煽られ、一気に高みへと上り詰めていく。  だめだもう、イく。 「ち、はや……もう、だめぇ……」 「あぁ、イけよ。ちゃんと、俺の名前呼んで」 「ちはや……ちはや……ちは……あぁ!」  びくびくと膝が震え、俺はびゅっと、精液を吐きだした。   「あぁ……」  中が収縮し、千早のペニスを締め付けているのが俺にもわかる。   「すっごい締め付け。俺も出そうだ」  余裕のない千早の声が、限界が近いことを物語っている。  千早は俺の身体を激しく揺らし、そして、 「出る……」  と、短く告げ動きを止めた。  あぁ、イったんだ。千早が俺の中で……  千早が俺の中でイったの、昨日から数えて三回目か。もうきっと、後戻りなんてできないんだろうな。

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