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<1> 真珠編

「俺って父さんとトモ兄が付き合ってどれくらいでできたの?」  ハンバーグを口に入れようとしていた父さんが、口を中途半端に開いたままフリーズする。  ファミレスで出てくるやつの二倍はデカいハンバーグ、緑、赤、卵の彩りが綺麗なサラダ、俺の好きな玉ねぎがいっぱい入った味噌汁。父さんの料理は、いつだって世界一おいしい。この人が作ったもの以外、口に入れたくない。 「え? それお前に言ってなかったっけ? 二ヶげ……」 「トモ兄じゃなくて、父さんに聞いてんの!」  今答えようとしたのはトモ兄。俺の……父親だ。俺はこの人の精子がもとになって出来たってことだ。  トモ兄は俺が子供の頃、運動会の父兄参加で必ず一緒に走ってくれたし、野球する時もサッカーする時も、俺以上にどろんこになって一緒に遊んでくれた。  あまりに思いっきり遊んで笑うもんだから、物心ついたときから「俺より子供みたいだな」と思ってた。お父さんというより、もう兄弟みたいな感じなので、「トモ兄」と呼んでいる。 「だ―――っ!」  俺を産んだ張本人が、箸を持ってないほうの手で机を叩く。ハンバーグが一瞬跳ねて、味噌汁の表面がお風呂みたいに揺れた。 「そんなこと……っ、飯食ってるときに聞くなっ! そういう話は俺がいないとこでやれ!」 「いないとこだったらいいんだ……」  相変わらず甘ちゃんで、隙だらけなところが可愛い。  男同士の間に生まれた子は、「お父さん」と「パパ」で呼び分けたり、男女の夫婦と同じように「お父さん」「お母さん」で呼ぶ子もいる。  俺の父さんは、母さんというより……優しくて、男らしくて、俺を抱きしめる腕はドキッとするくらい力強かったから、「お母さん」と呼びたくなかった。だから男としても親としても大好きだよ、って気持ちを込めて、「父さん」と呼んでいる。 「そん…なこと……子供に知られたくない……恥ずかしいんだよ! わかれよっ」 「いや俺、一ヶ月くらいかと思ってたから、意外に遅かったなって思ったよ。ね? トモ兄。逃したくなかったんでしょ」  父さんのこと、とトモ兄の顔を見ると、ハンバーグを口に放って箸の先を噛んだまま、探るみたいな目で……感情が読み取れない表情で見返された。 「俺、十月生まれってことはさ、クリスマスにできた子なの?」 「いや、ヤりまくってたからお前がいつできたかわかんないんだよな」 「バカヤロ――ッ!」  さっきよりも皿の中身が揺れる。せっかく作ってくれた料理が落ちたらもったいないので、さりげなく手で押さえて落ちないようにした。トモ兄も同じようにやっている。 「食事中にそういう話をするなっ! こっ……子供がそんなこと聞くもんじゃない!」 「なんで? 俺、父さんの子供だけどさ、恋人でもあるんだよ」  そう言うと、ぐっ……と押し黙る。目を泳がせてあからさまに動揺する様子が可愛くてムラムラした。この顔が見れただけで聞いてよかった。 「俺のほうが智樹さんの恋人歴、長いから」  父さんの可愛い顔だけ見ていたいのに、横から子供おじさんが張り合ってくる。バチバチと睨みをきかせていると、 「変な空気にすんな……お前、明日バイトは? 俺何時に起きればいいの」  取り合いされてる張本人は、これみよがしに話題をすり替えた。いつも俺かトモ兄が家を出ていく時間に合わせて起きて、必ず朝食を作ってくれるんだ。  俺は大学に行きながら、モデルの仕事をしている。友達に付き合って原宿を歩いていたら、上から下まで隙のない、男みたいなパンツスーツを着た女の人にスカウトされた。  俺は人生で「父さんと一緒にいること」以外、必要なものはない。そして少しでも役に立ちたいし、「使える」「優秀な子供」と思われたいので、普通にバイトするよりも稼げそうなその誘いを二つ返事でOKした。 「明日ね、ちょっと早くなった。八時に出なきゃダメかな」 「ん。朝、今日の残りもんだな」  食べ終わった父さんが、先にお皿を重ねて流しに持っていく。俺は朝が一番食べるので、朝からハンバーグやステーキが出てきても全然大丈夫だ。残りもん、と言いつつ、いつも必ず新しく一品作ってくれる。そういうところがすごく愛おしい。 「父さん、今日俺とする日だからね」 「……え? 今日、木曜……」 「金曜日」  そう言うとシンクの前に立った恋人は、苦いものを食べたような顔をした。ひどい。傷つく。 「寝ちゃダメだよ」 「……はいはい」  リビングで堂々とセックスする約束を取り付ける。すっとぼけたわけじゃなくて、本気で木曜日だと勘違いしてたみたいだった。  うちでは俺とトモ兄で、父さんとエッチする日を曜日分けしている。こうやって決める前、その都度がっついていたら、父さんの体力がもたなくてご飯も作れなくなってしまって……キレられたことがあるからだ。  俺が月、水、金で、トモ兄が火、土だけど…… 「がっついてるお前と違って、俺はもう精神的に繋がっているのだよ」  と言って、必ずしもその日にしているわけではないらしい。その余裕のある言い方が、言葉で言い表せないほど腹が立つ。  だって、だって……トモ兄と父さんが過ごした年月に、俺は決して追いつけないのだから。      皿洗いは俺の担当なので、父さんは先にお風呂に入った。  父さんは俺が生まれて仕事を辞めて専業主夫になったので、「俺、別に昼間なんもしてないから……いいよやんなくて」と言うのだけど、いつも泣きが入るまでエッチして無茶させてしまってるから……ご飯は父さんの以外食べたくないから作ってほしいけど、せめてお皿洗いや掃除くらいは手伝いたかった。 「……妊娠してるときの父さんとやった?」  残ったトマトを口に放り込んだトモ兄が顔を上げる。 「お腹おっきい父さんと」 「ははっ」  目の前にいる俺の一生のライバルは、子供みたいに声を出して笑った。 「それはお前、聞かなくてもわかるんじゃねえの」 「うえ、じゃあ俺がお腹ん中にいたとき、トモ兄に下から突かれたんだ……おえーっ」 「はははっ! お前、文章の才能もあんじゃない? 小説書けば? 官能小説」 「……やだよ」  爆笑しながら「俺のちんこの先とお前の頭、くっついたかもな」と最悪な冗談を言ってきた。でも、前に漫研サークルの友達が、自分の好きなキャラ同士の恋愛話を描いてイベントに出ていると聞いた。……それって、現実に存在する人間の話を書いて出店してもいいんだろうか? 「妊婦さんにそんなことするなんて最低だね」 「でもお前だってやるだろ」  俺の立場だったら、とずいっと顔を寄せてきて言う。……近い。 「……どうだった?」 「そりゃ一生分のオカズですよ」  上に乗ってもらった、と聞いて、お腹のおっきい父さんが跨ってる姿を想像するだけで勃ちそうになった。 「……俺は一生できない」 「それは父親の俺だけの特権だな」 「なんかもっと……もっと……トモ兄とまだやってないこと……、プレイとか、ないかな……」 「お前がそう言うと思って俺、ほとんどノーマルなことしかやってねえぞ智樹さんと」  このオッサンは文章の才能「も」と言った。  俺がモデルの仕事をしてることは素直に誇りに思ってくれてるみたいだし……たまにこういう、「父親として」だか、「同じ人を好きになった同士」としてだか知らないが、謎の気遣いをしてくる。  トモ兄が思いっきり嫌なヤツだったら、俺も遠慮なく嫌いになれるのに。やっぱり大人の余裕を見せつけられてる感じがしてムカつく。その気遣いは、俺からするとマウント取ってるようにしか見えないからだ。 「あーでも」  何か言いかけたと思ったら、 「……夢ん中でできるかもな」  ……と、意味深なことを言った。         「ねえ! この中でトモ兄としてないプレイある!?」  ベッドに座った途端にそれを見せられた父さんは、鳩がガチ銃弾を食らったみたいな、ぽかーんとした顔をした。    69、尿道、おもらし、キスだけ、目隠し、顔射、亀甲縛り、足コキ、SM、ヌカロク、手錠、ハメ撮り、立ったまま、女装、足舐め、乳首だけでイく    早速父さんがドライヤーしてる間に、ヒャンドゥで百円じゃなく五百円だったデカいホワイトボードに、思いついたものを全部書いた。全裸で。 「あのさ……前から不思議だったんだけど」  すぐ殴られるかもと覚悟してたのに、意外にも冷静に返された。 「お前ら、おもちゃとかは使わないわけ?」  そんだけエロ用語出しといて、逆にないほうが違和感ある……と言われる。 「バイブとか、ローターとかが一番上に来るんじゃねえの」  まさかの父さんの口から「バイブ」「ローター」という言葉が出てきて興奮した。 「……使われたい?」 「そういう意味で言ったんじゃないっ」 「いや、おもちゃで気持ちよくなっちゃうとこも見たいけど……やっぱ俺のでよがらせたいって思うかなあ」  俺のちんこでドロドロになっちゃうからいいんじゃん、と付け足すと、「やめろ」「そういう空気出すな」と耳を赤くしてそっぽを向いた。そういう空気って、今まさにこれからエッチなことするから寝室にいるのに。……かわいい。 「おもちゃに嫉妬しちゃうっていうかさ……あ、トモ兄にも聞いてみよっか?」  「いや、いいよ……」って嫌がられたけど、ドアを開けてリビングにいるオッサンに聞くと、同じ答えが帰ってきた。ベッドに戻って自分が書いたホワイトボードを確認する。 「……シックスナインしたことある?」 「……ない」 「本当!?」  トモ兄としたことない「初めて」が残ってることが、すごくすごく嬉しかった。シックスナインとか言うなよ……と父さんはげんなりしている。 「……尿道は?」 「っ……」  ぐっと押し黙った。 「いじられたの?」 「……思い出したくない」  今にも消えそうな、小さい声。 「……恥ずかしかったんだ?」 「っ……もういいだろ! そんなこと真正面から聞く奴があるか!?」  初体験をいろいろ奪ったトモ兄に嫉妬しちゃうけど……嘘をつけずに馬鹿正直に答えちゃう父さんが可愛い。  そのまま上から順に、おもらしを見せたことあるか、キスだけでイッたことあるかと聞いたら、俺と目を合わせないまま、 「……ある」  と答えて……。まさかおもらしプレイまではしてないだろうと思ってたからショックだった。 「……俺、真珠入れようかな」  「バイブ」「ローター」という単語に興奮して、微臨戦態勢になった相棒を見ながら呟く。  だって……悔しいけど、トモ兄に勝てるところがない。ゴツゴツしたかっこいいちんこになれば、気持ちよくてクセになって、俺から離れらんなくなるんじゃないだろうか。トモ兄のちんこなんて、ウインナーにしか見えなくなるかも……。 「ぶっ……」   本気で言ったのに、こっちを見て盛大に吹き出した。 「お前……っ、真顔で股間見ながら言うなよ」 「笑いごとじゃないよ!」 「そういう知識どこから仕入れてくんだよ」 「いや、この前アウトレンジ見たじゃん。原作だとそういう描写があるらしいよ」  映画を見たあと、なんとなくウィキペデュアを流し見していたら、「原作小説ではそういう設定がある」とご丁寧に脚注のところに書いてあった。 「……いいよ、そのままで」 「う……!?」  優しい声色が聞こえて、お風呂上がりで湿気を帯びた身体が近づいてきたかと思うと、きゅ、と俺のものを掴んだ。 「ぁ……」  エロ質問に素直に答える父さん……というシチュエーションだけでだいぶキていたので、握られた瞬間、秒で完勃ちになった。 「ん……」  先っぽが大好きな人の口に消えていく、嘘みたいな光景をガン見する。垂れてきた髪を耳にかける仕草が、信じられないくらいエロちっくだった。無意識にやってるんだろうけど……誘ってるようにしか見えなくて、頭が煮えたぎってぐちゃぐちゃになる。 「ん、む……」 「……これ、好き?」  そう聞くと、小さい声で「……うん」と言った。俺があぐらをかいてる状態だと舐めにくいのか、「もっと腰上げて」と言われて、お尻の下に枕を敷いて高くした。 「む……、ふ……っ」  父さんは頭だけ下げて俺のを舐めている。必然的にお尻が高く上がって……女豹みたいなポーズになってエッチだった。 「ふぅ……っん……」  舌の上をすべって、俺のが全部熱い口の中に消える。心臓の音に合わせて、中でびくびく脈打ってるのがわかる。ひっきりなしに先走りが出て、それを喉の一番奥で吸ってくれた。 「はぁ……っ」 「ん゛っ……! ぐっ!? う゛……っ」  もっと限界までいきたくて、頭を押さえて喉奥を突くと、奥まで入りすぎてしまったみたいでゴホッと噎せた。その刺激にも興奮してしまう。 「ごめ……、父さん……苦しかった?」  涙目になった瞳と目が合う。 「も、出そう……っ」  自分でも早いのはわかってるけど、好きな人の口の中に入って、我慢なんかできるわけなかった。ゆっくり引き抜きながら吸われて、また根本まで見えなくなって…… 「ぶっ……ん゛んっ!?」  喉奥に到達するタイミングで射精した。 「んぐ……っ! んぅ゛うっ……」 「はっ……父さ……っ」  出した瞬間、掴んでる頭がビクッと震えた。もう何回もしてるのに、父さんは絶対に飲むのを躊躇する。十秒くらい経ったあとに観念してごくごく飲み始めるので、逆に口の中に溜めてから飲むみたいな……えっちな感じになってしまっている。 「ん、ごく……ふ……っ、こく……」  AVに出てくるみたいな、下品な舐め方もしない。あんまり音を立てないし、いつも控えめだ。本人に聞くと「恥ずかしいから」。いつまで経っても慣れない、初めてみたいなぎこちなさが本当に可愛い。 「は……、き、もち……よかった……」  引き抜いて素直に伝えると、ぽーっとして潤んだ目と目が合った。 「……ちゃんとかっこいいよ」  すっきりして、くたっとしている俺のものを握りながら言われてドキッとする。口の中で俺のが糸引いて見えるのは幻覚だろうか。 「こ、の……ままがいい」 「父さ……」 「だから真珠、とか……変なこと言うな」  泣きたいほど嬉しくて、叫び出したいほど嬉しくて、もう真珠なんか絶対入れないと誓った。これからも、生まれ持った長さと太さで勝負する。テクを磨く。 「うんっ……父さん、好き、好きっ」 「あっ……」  そのまま押し倒して、パジャマを脱がしながら左肩にキスした。  ……父さんの両肩はキスマークと歯型だらけで、内出血してるみたいに赤くなっている。ぱっと見グロテスクだ。  俺が左肩で、トモ兄が右肩。肩だけは、痕をつけていい場所を決めてある。ぱっと見てどっちにどれだけ抱かれて、どれくらい経つかわかるようになっているのだ。 「ぁ……っ! んっ……」  今、またひとつ赤を増やした。左肩はもう画用紙一面に絵の具をぶちまけたみたいに、キスマークと噛み跡、正体がよくわからない鬱血した色でいっぱいだ。  右肩を見ると、薄くなったキスマークたちの中に、やっぱり薄い歯型が一つだけぽつんと残っていた。  それを見て「しょっちゅうヤらなくても精神的に繋がっている」と言っていたのを思い出す。胸がザワザワする。 「……くそっ」  もうそこは真っ赤で、新しい痕をつけるスペースなんかないはずなのに、強引に噛み付いた。 「い゛……っ!」  ビクッと触れた身体が硬直するのがわかる。顔を上げて、唾液に混じった丸い歯型を見るとドッと安心した。 「っ……噛む、な……て…っ、ん……っ!?」  人差し指と中指を、強引に熱い口内に入れた。 「なめて」  さっきまでこの中に俺のちんこが入ってて、一生懸命しゃぶってくれたんだと思うと、それだけでイきそうになった。 「ふぁ、ぁ」  二本の指で舌を挟んで意地悪すると、ビクビク反応する。父さんはお尻も大好きだけど、口の中も性感帯だ。 「んぁ……っ」  引き抜くと、唾液が長く伝ってエロかった。体温であったかくなった指を後ろの穴にあてがう。 「ぁ、やだっ……」 「……今日、仕込んでる?」  指に力を入れると、想像よりもぬるっと奥に入っていく。父さんはたまに、お風呂で自分で後ろを慣らす……というより、ローションを仕込む。  「俺が全部したいからやらないで」って言ってあるんだけど、どうもお尻を舐めてほぐされるのが恥ずかしくて嫌らしく……そうするようになったらしい。ただ曜日を忘れていたり、お風呂に入る前に俺に捕まると、大人しくぐずぐずにされるしかないのだけど……。 「垂れてくるよ……」 「ひ……っ」  意地悪してわざと中を開くと、とろ……と熱でとろけたものが零れてきた。 「嫌だ……っ! も、入れろっ」  父さんからしたら、少しでも早く終わらせるために仕込んだのに、逆にじっくり見られて……恥ずかしくてたまんないんだろうな。もっといじめたくて、わざとぐにぐに穴を開いた。 「俺に入れられるためだけに、お風呂で慣らしてくれたんだ?」 「っ……違、うっ……あっ……!」  何も違わないのに否定する。我慢できなくなって完勃ちした俺ので入り口を突くと、ぬるぬるで吸い込まれそうだった。 「何もしなくても入っちゃいそ……」 「うぁっ……」  そこが「早く」って言ってるみたいに収縮する。 「父さん、好き……っ」 「あっ……ふぁあっ……!」  半分くらいまではゆっくり入れたけど、たまんなくなって一気に根本まで突き入れた。 「っ! っ―――……!」  熱い。ぐずぐずでとろけてて、離さない、って言ってるみたいにぎゅうぎゅう締め付けてくる。 「は、エロ……っ」  キスして、綺麗な筋肉がついたもちもちの胸を揉む。そのまま奥を突いた。 「ぁ、あ、ん゛――っ……! んう゛ぅっ」 「いいよ……声我慢しないで」  口を塞ごうとしたので、手首を掴んでベッドに縫い付けた。  ……この寝室は防音に改造してある。ここは八階建て賃貸マンションの最上階で、防音工事なんてマイホームでも買わない限り無理だけど、トモ兄が持ち前の人懐っこさで大家さんと仲良くなり、「俺は奥さんのことが大好きで、可愛い声を我慢させたくない。寝室を防音にしていいか?」と聞いたら、快くOKしてくれたらしい。「引っ越すことになっても、楽器OKの部屋として貸し出せるからいいわよお~」と。百万円くらいかけて壁をナントカっていう素材で厚くして、窓も分厚いやつが二重になっている。 「はぁあ……っ! ぅ、あ、待っ……」 「父さん、好き、好きだよ……」  耳元で囁くと、言葉に反応するみたいに中が搾り取ろうとしてくる。もうちょっと我慢できるかと思ったけど、そんな可愛い反応されて堪えきれるわけなくて、あったかいところで暴発した。 「ひぁっ……!? ぁ、あ―――……!」 「はっ……」  あんまり動いてなくて、一番奥にぐりぐりしてただけなのに、中にかけられた感触だけで父さんもイった。もう口の中だけじゃない、全身が性感帯のエッチな身体……。 「ぁ……っ! 駄、目……っ」  出されたのを噛み締めながらイってる可愛いものを扱きながら、おでこにキスした。 「ねえ、抜かないで何回できるか試したいな……」  床に落としたホワイトボードにある、「ヌカロク」の文字を横目で見る。ついさっきまでこんな言葉知らなかったけど、ボードに書くために適当にエロ用語を調べてたら出てきた。めちゃくちゃいい言葉だなと思ってロマンを感じた。 「抜かずの六発、俺できるよ」 「馬鹿……っ、ぁん……、っ」  ずるずると亀頭が抜けそうになるまで引き抜くと、ぐちゃ……と音がして精液がシーツに零れ落ちた。  いつも三回か四回で父さんがギブアップするので、負担が少ないように、激しくしないで……ゆっくりやれば、六回できるんじゃないだろうか。 「俺、の……歳を考えろ……」  掠れた低い声でそう言われる。改めて組み敷いてる人の前髪を掻き上げて、綺麗な顔をまじまじと見つめた。 「父さんってシワが全然ないから……四十六歳って気がしないんだよね。三十代でも全然通用するよ」  実際、俺が取ってる講義の教授も四十後半だけど、同い年どころか、同じ人間なのかも疑わしいほどこの人は若々しい。俺なんかより父さんのほうがよっぽどモデルに向いてると思う。 「バカ言え……」 「こうやっていっぱいエッチしてるから肌もツヤツヤなんじゃない? 俺も現場で、すごい肌綺麗って褒めら……っ」  揺さぶられて疲れてるはずなのに、キレッキレの鉄拳がいつも通り飛んでくる。殴る時に腹筋に力が入ったのか、ぎゅううっと締めつけられて「うっ」と声が出た。 「喋るな……」 「ほんとのことだもん」  そう言いつつ、父さんは俺の仕事をわかってるから、絶対に顔とか身体は殴ってこない。頭オンリーだ。そういう何気ない気遣いに愛情を感じる。 「んっ……」   ちゅ、ちゅ、と鼻先、頬、おでこにキスして、ほぼ抜けかけていたものをもう一度押し込もうとすると、 「今日……も、だめ……」 「えっ……!?」  絶望的な言葉が聞こえてきて、光の速さで顔を上げた。まだ一回しか中に出してない。もっとマーキングしたい。 「な、なんで!?」  抗議しながら「だめ」を無視して奥まで入れると、「んっ」とエロい吐息が漏れた。 「はっ……、明日、飯、作れなくな、から……っ」  一瞬嫌われたのかと焦ったけど、理由が「ご飯」で拍子抜けした。そういえば今日は夕飯の時間がちょっと遅かったから、こうやってイチャイチャし始めたのも日付が変わるちょっと前だ。 「俺とエッチするのと、朝ごはんとどっちが大事なの?」 「飯」  喘ぐ合間に即答されて、頭をハンマーでぶん殴られたくらい落ち込んだ。 「なんでよ、どう考えてもセックスでしょっ」 「お前にちゃんと出来たてのあったかい飯食わしてやりたいの!」  怒鳴るみたいに言われて、また中が締まる。一瞬の沈黙のあと、嬉しさがじわじわと波紋のように胸に広がっていった。俺のことを考えてくれるのが嬉しい。愛してくれるのが嬉しい。俺も父さんのご飯以外、食べたくない。 「父さん……っ!」 「あ……っ! えっ……!? んあぁっ」  ヌカロクはまた今度、早い時間からエッチした時にチャレンジしよう。恋人に、「お前のためにご飯を作りたいから寝たい」と言われちゃ断れない。あと一回出して、中に入れたまま寝よう……と決意して、気持ちいいその場所をまた抉った。 おわり *** 全10話を収録したものがKindle Unlimited読み放題で配信中です!全部エロです。 https://amzn.to/3Nyp5hU あらすじ画面もご参照ください。

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