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22.決着

重苦しい戦いならではの空気が辺りを包む。2人より見ている方が緊張してきて嫌な汗が流れてくる気がした。 「……本当に面倒だな」 「外したか。君も素早く動き回るね。参ったな……時間が経つと埃っぽくなるだろう?美しいままで終わらせたいのだが」 「次で終わらせてやる」 「余裕だね、ディケンズ君。奇遇だな、私も次の一撃で終わらせようと思うよ。君との演舞は楽しかったが、ギルド長にも見てもらいたいからね」 勝ち誇ったような笑みでリューに笑いかけると、ヒースが右足で力強く踏み切る。その勢いで長剣でリューに向かって何度も突きを繰り出してくる。 (おい、一撃じゃないだろう?連打じゃないか) 僕の心の中の抗議は届いてはいないだろうが、ギルド長の顔つきが少し変わったことからも、この戦いは有意義なものになっていることは間違いない。 重たいはずの長剣は、風を切りリューの接近を拒む。それでもリューは何食わぬ顔で突きの最中に近づいていき、上半身をうまく使いながら軌道を読んで身体を反らせ、首を捻り、前後に動かして、と、柔軟に動いているようだ。 正直、目で追うのがキツイほどで、ヒュッ、ヒュッ、という音と、黒い固まりがじわじわと距離を詰めていることしか見えない。 「君は相変わらず、怖いもの知らずなんだね?私の剣が怖くないのかい?」 「別に。腕の長さと剣の長さは変わらないのだから、躱せばいいだけだ」 それでも時折リューの髪が飛び、服が少々破れたりはしているのだが。リューは気にせずに少しずつ、躱しながら距離を詰めていく。 「参ったな……この私の、華麗な連続突きを、ほぼほぼ躱してしまうなんて、ね?さすがに、腕が疲れてきたよ……」 「だったら早く降参しろ。俺も次の方が厄介だ」 手数で勝負していたヒースもここに来て長剣の重みが身体に負担をかけたようだ。 僕から見ても疲労が見えてきた。対してリューは身体の動きは最小限に、多少食らっても構わないやり方で、相手に威圧感をかけていく。 無言のまま距離を詰めてくるリューに焦るヒースファイが、飄々とした表情を曇らせていく。虎視眈々と迫るリューとは対照的に手数を減らしつつあり、僕から見ても最後の打ち合いになるのは時間の問題だった。 「ック、こうなれば秘技をお見せするしかなさそうだね……!」 ヒースファイはフッ、と短い息を吐くと、連打を止めてグッと腕を引いた。リューは何かが来ることが分かっても、好機を逃さず懐へと飛び込もうと地を蹴り、跳躍する。 2人の距離は更に縮まり、見ている者たちも息を呑む。 「いくら君でも、これは躱せまい!」 魔力が込められた剣から放たれた衝撃波が空を切って、リューへと一直線に飛ぶ。その風圧は凄まじく、見ていた僕たちにも強風が襲いかかってきた。この威力の風圧は間近のリューが受け止められるとは思えない。リューの真正面に突き出された剣を躱すことなど不可能に思えたのだが―― (え、嘘だろ?リューが……消えた?) 僕の視界からもリューの姿はかき消えて見えなかったのだが、皆が気づいた時にはヒースファイの喉元にナイフが突きつけられていた。一体いつの間に懐に飛び込んだのだろうか? 「ハハ……君の速さには負けたよ。降参、だね」 「勝負アリ、だな。勝者はリューライト!」 ギルド長の声にナイフを下ろすと、リューは何事もなかったかのように踵を返してその場を離れる。ヒースファイはやれやれ、と、大げさにリアクションするが、笑顔を絶やさない。 「今回は負けてしまったけど、次は私が勝利の美酒を頂くとするよ」 リューは首だけで振り返り一瞥すると、何事もなかったかのようにギルド長の前へと向かう。待ち構えるギルド長はニヤリと笑んでリューライトを見下ろした。

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