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23.炎狼

リューがギルド長の前へ立つと、ギルド長はスッと目を細めてリューを見遣る。 その眼差しを遠くから見るだけで寒気がする。本当にあの人は一体何人を手にかけてきたのか。アレの真正面に立つリューもリューだけれども。 「やはりお前が来たな、リューライト。さぁて、久しぶりに遊んでやるか」 「俺は問題ありません。すぐに始めましょう」 ゴキゴキと肩の関節を慣らす音が僕の耳にまで届く。リューよりもデカい体格を持つギルド長を前に、涼やかな表情を一切変えないリュー。 (リューのことだからうまくやるのだろうけど、どうする?) 誰もが注目するなか、ギルド長が獲物を抜いて構えた。 刀身がギラリと光る。あの両手剣だけでもかなりの重量だろう。なのにも関わらず、精密な射撃まで得意だと言うのだから、リューは一体どうやって戦うつもりなのだろうか。 「リューライト、銃を使ってもいいぞ。その代わり俺も遠慮なく抜くからな」 「どうぞ、ご自由に」 (リュー……無茶はほどほどにしてくれよ?) 俺の内心を知ってか知らぬか、何故かリューと一瞬目があった気がした。 驚く俺が見えたのか、否か。俺にはリューが微笑んでいるように見えた。 「まずは軽く運動からしようや。最近身体がなまっちまってな」 言うと同時に、ギルド長が構えた剣でリューに斬りかかる。勿論、それはただの素振りのようなもので、リューに大してのハンデのような動きにも見える。 対するリューも、スっと荷重をズラすのみで最小限の動きで剣の軌道を躱す。 「そんなに手加減して頂かなくても大丈夫ですが」 「ハッ!相変わらず可愛げがないな。お前も小さかった頃は可愛かったのにな」 「……今日は良く喋りますね」 「お前が喋らないから、代わりにな。じゃあ、もう少し上げていくか!」 楽しそうに笑い飛ばすと、先程とは打って変わって力強く地を蹴って距離を縮める。 斜め、横、縦、そして斬り上げ―― 重量のある剣を自在に振り回し、リューの身体に叩きつけようとする。 リューは舌打ちとともにスレスレのところで躱していくが、ヒースファイよりも速さも強さも違うギルド長を相手に連戦の疲れがあるのか、余裕はあまりなさそうに見える。 「ほらほらどうした!大口を叩いたのだから、ちょっとは反撃してみたらどうだ?」 「……」 「まただんまりか?リューライト!」 煽るような咆哮をあげると、ギルド長が真上からの一撃をリューの頭上へと振りかざす。 リューは強烈な一撃をいなし振り下ろされた刃を両手で握ると、グッと押し込んで躊躇わずに一気に反動を付けて跳躍する。 ギルド長の頭を通り越し、身体を捻り背中側へと着地すると同時に首元にナイフを振るうが、それは読まれて返す柄でナイフを吹き飛ばされた。 「……ッ」 「今のは悪くないが、まだまだ!」 追撃の一撃が来る前に紙一重で斬撃を避け、リューが一旦ギルド長から距離を取ってマグナムを引き抜いてすぐさま弾を打ち出すが、それも読んでいたギルド長は剣戟を振るって弾を切り飛ばす。そもそも、弾を切るような芸当をしてくるのが異常だ。リューも当たるとは思ってはいないだろうが、眉を顰めて少しだけ表情を崩した。 (本当に戦いたくないな、この2人とは……) 観戦しているこちらが怖くなって息を飲む。リューはスレスレのところで攻撃を躱しているし、ギルド長も手加減しているのだろうけども楽しそうだし、戦闘狂同士の試合を見せられている気がして背中に嫌な汗が流れた。

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