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24.隠し玉

「そんなに撃ち合いがしたいなら付き合ってやろうか?」 ギルド長は一旦剣を収めると、今度は銃に持ち替え、右、左、と順番にリューをめがけて発泡していく。リューも軌道を読んで避けるが、たまに避けきれずに肌と服を掠めていく。 「そんなに防戦一方じゃ俺には勝てないぞ」 ギルド長はリューを煽るがそれも無視し隙を見て弾を放って牽制を続ける。それでも全弾打ち終えると、仕方なくリューも銃を収めてまた距離を詰め、ギルド長に蹴りを放とうと左足で地を蹴って体重をのせて飛び込む。ギルド長もリューが近づいてくるのが分かると銃を素早くホルダーへと差し込んで受け止める体勢に切り替える。 「ほう?今度は肉弾戦か?いいぞ、付き合ってやろう」 リューの蹴りは軽く腕で止めて、重い拳をリューの腹辺りに放つ。リューも読んで後ろに飛び退くが拳は抉るように直線に伸びてくる。回避を諦め両手で拳を受け止めようとするが、重さを殺しきれずにそのまま壁へと吹き飛ばされた。 「……ぅ」 「おーおー……思ったよりも吹き飛んだな。リューライト、生きてるか?」 背中から壁に叩きつけられたリューは何度かむせてから、ゆっくりと身体を起こす。ギルド長の力強さはやはり厄介だ。 (それでもリューの目は諦めてない感じがする。逆にやる気に火が付いた、とか?) 「さすがはリューライト。これくらいじゃ怯まないか」 無言で目線を向け、ゆらりと立ち上がると動く足で飛ぶように距離を詰める。 真正面にわざと飛び込み、楽しそうに笑っているギルド長の伸びた腕をギリギリでしゃがんで回避した。 「すばしっこいな!で、次はどうする?」 続けざまに予備のナイフを抜いて喉元を狙いにいくが、それはやはり読まれていつの間にか出された剣で防がれる。 ギィン!という不快な金属音が辺りに響き、リューも瞬間顔を顰めるがそれも計算はしていたらしく、素早くナイフから銃に持ち替えて近距離で引き金を引いた。 「おま、あっぶねぇな!」 ギルド長がすんでのところで顔をズラして躱す。当たれば危ない位置だったがリューも避けると分かっていての攻撃だったらしく、すぐに切り替えて膝をギルド長の鳩尾辺りに放つ。 「コッチに気を取られている間に、か。いい組み合わせだ」 余裕の笑みでリューの膝を手で受け止め、払い除ける。リューは体勢を崩されるが無理矢理身体を回転させて耐え、ナイフを膝の関節部へと突き出す。 「下半身狙いか。俺じゃなかったら危ないかもな」 指導する口調だが、どうみても楽しんでいる。それでもリューは何度も、何度も、同じ位置に斬りかかっていく。 「俺を揺さぶろうとは、考えたな。だが、さすがに疲労が出てきたな?リューライト」 「……」 リューは一瞥し、また攻撃を繰り返す。ギルド長の言う通り、確かにリューの速さは落ちてきている。ギルド長は低い位置にも蹴りや剣を振り下ろし、リューの動きを遮ろうと攻撃を加えているしそれを避けながら懐に入ってやり合うのは、正直リューにとって不利だろう。 (どうするつもりだ?もう降参していいんじゃ……) 僕も傷だらけのリューを見たくはないのだが、リューはそれでも攻撃をやめない。何度繰り返したか分からないまま時間だけが過ぎる。 「いつまで続けるつもりだ?そろそろ体力の限界だろうが」 「……もう、終わります」 リューが漸く言葉を発すのと、ギルド長が振り下ろした剣が地面へと振り下ろされたのと同時に、リューではなくギルド長の方が何故か体勢を崩し、たたらを踏む。 「ハッ!なかなかやるな。俺の攻撃力を利用するのはいい案だった」 「――参りました」 地面が陥没し砂埃が立ったのと、それでもギルド長の剣がリューの首元に突きつけられたのは同時だった。結局リューが降参し試合は終了となり、漸く解散となった。

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