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29.放っておけなくて
一方的に話を切って寝てしまってから、近くで苦しそうな声が聞こえて目が覚める。
傍らのリューを見ると、うなされているらしく呼吸が荒い。
額に手を当ててみると少し熱くなっていて、しっとりと汗をかいていた。
「リュー?具合が……」
「……ぅ、……」
「大丈夫か?汗をかいているのなら、何か拭くものを……」
僕が言いかけて離れようとすると、空を掴むようにリューが天に手を伸ばす。薄っすらと目を開けているようだが、焦点が合っていない。
「……くな……やめ……」
「何、どうした?」
「息が、できな……」
何故か呼吸が乱れている。何か悪夢でも見ているのだろうか?
死にかけた経験でもあるのかもしれない。安心させるように手を握ってやると、握り返してくる。
「大丈夫だから」
言葉が届いたのか、安心したように呼吸が落ち着いてきた。
天を向いていた視線が僕の方へと流れてくる。
「……やっと、助けに……」
それだけ呟くと、また目を閉じてしまった。腕も力が抜けたのでそのままベッドへと置いてやる。一体どんな夢を見ていたのだろうか?
「お前こそ、もっと話してくれれば助けられるのにな」
僕はベッドから下りてタオルと着替えを持ってくる。リューの服を脱がし、汗をかいた身体を拭う。一通り終えると新しいシャツを着せて布団もかける。その隣に自分も潜り込んだ。
「僕が折れるか……リューの方が込み入ってそうだし、ギクシャクするのは嫌だしな。事細かに説明するしかないか。それでお前のことを聞き出せば等価交換になるだろう?」
苦笑してリューに抱きつく。今は落ち着いて静かに眠るリューの体温はやはりいつもより温かい気がした。
+++
僕がゆっくりと目を覚ますと、隣に寝転んでいたリューが僕を見ていて普通に驚いてしまった。
「リュー?驚かせるなよ。おはよう」
「あぁ。おはよう」
「挨拶は返すんだな。まぁいいや。気分はどう?」
「問題ない」
端的に答えるがリューはまだ僕を見たまま動かない。絶対に言いたいことがあるのだろうが、どう切り出していいのか分からないのかもしれない。
「そんなに見つめられても、僕は寝起きは悪くない方だし綺麗だろう?」
「それは知らないが……昨晩……俺は何か言っていたか?服が違うことは分かったのだが」
「あぁ、それは寝汗をかいていたから着替えさせた。で、苦しそうだったな。何を言っているのかは良くわからなかったが、助けを求めていたように見えた」
「そうか。偶にあるのだが、余り気にしなくていい」
(気にするなと言われても、気になるよな……)
典型的な答え方をするリューに笑ってしまう。どうして笑う?という表情を見せるリューの頬を撫でながらまた身体を寄せる。
「必死だったからな。まぁ僕も昨日言いたいことを言わなかったし?そうだ。昨日のやり直しをして、先にイッた方が答えることにしようか」
「何を言い出すのかと思えば……」
「それなら分かりやすい。僕にも勝機がある」
「俺がそれにのるとでも?」
心底嫌そうな顔で言うリューを丸め込む作戦ならば、ある。僕は片目を瞑って見せた。
「昨日のリューの姿を言いふらす。だって、片手を天に向けて苦しそうにしていたし。あれは何かあるとしか思えない」
「またくだらないことを……別に言いふらしても構わないのだが」
「ギルド長に言おうか?あの人なら凄く心配してくれそ……」
「……分かった。もう俺は子どもではないから、心配されるのはごめんだ」
過去にも心配されたことがあるのか、ややうんざりとした表情で条件を飲んだリューを見ていると楽しくなってきてしまった。
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