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34.ゆったりとした時間

リューの肩に寄りかかったまま熟睡してしまったらしい。僕が目を覚ました時には横にいたリューも眠っていた。 「ん……」 「……」 「あれ、今何時くらいだろう……」 「……そろそろ夕方だ」 僕の微かな動きで目を覚ましたリューが首だけこちらに向けて呟く。 律儀にここにおとなしくいた結果、眠ることしかやることがなくなってしまったようだ。 (本当に動かなかったのか?相変わらず律儀というかなんというか……) リューの優しさに感謝して微笑むと、リューは訝しげに眉を寄せてから目線で肩から離れろと訴えてくる。 「リューの肩は硬いけど、それはそれで安心できたよ」 「文句を言うくらいならベッドで休め」 「冗談だって。僕が言ったからここにいてくれたんだろう?」 「お前が気づかないうちに動いていた可能性はあると思うが」 リューはそう言うが、そんなことはないと思う。勿論気づかずにということもできるだろうとは思うけれど。 「まぁどっちにしてもこうしてくれているから、それに対してお礼は言わないと。ありがとうリュー。これで僕らの絆も深まったんじゃないか?」 僕の言い分を聞くと更に睨むようにこちらを見てくる。が、僕はこれくらいではもうどうとも思わない。本気で不快に思っている訳ではないからだ。 「付き合わされる方は面倒なだけだ。とてもそうは思えないが、バディの言い分を無下にするわけにもいかないからな」 「それだけの理由で?本当に、リューは生真面目なのか、お堅いのか……」 僕がクスクスと笑いながら身体を離すと、せいせいしたと言わんばかりにスッと立ち上がる。肩を回して軽く解してからまた僕に視線を合わせてきた。 「少し身体を動かしてくる。……普段の半分の時間で戻る」 「え、あぁ……分かった。無理はするなよ」 リューはそう言うと、手入れした武器のナイフを持って階段を上っていった。 屋上で少し身体を動かしてくるのだろう。僕はリューを見送ってからゆっくりと立ちあがって両腕を伸ばす。何も食べずに眠ってしまったことを思い出し、何かないかとキッチンに向かう。 「まぁ……スープくらいなら。買い出しまた行かないとダメだな」 食事当番は特に決めてはいないが、リューは放っておくと飲まず食わずで過ごす癖がある。 なので、定期的に栄養を与えてやらなければならない。 ギルド長のところで少しは人間らしい生活を学んだようだが、元々が酷い生活だったせいかまだ僕のほうが生活力があると言わざるを得ない。 「何でもできる方がモテるし」 これも処世術みたいなものだ。そう言い聞かせて、リューが戻るまでに簡単に夕飯の支度を始めた。 +++ スープが完成した頃にリューが下りてくる足音が聞こえる。僕が何をしているか分かったリューはこちらに近づいてきた。 「おかえり。先にシャワー浴びてくれば?その間にできるから」 「あぁ」 短い返事だけすると、言う通りにリューはシャワーを浴びに行く。 大して汗をかいている雰囲気もなかったが、そのほうがまたゆっくりできるかと思ったからだ。 ありあわせのもので作ったスープと、余っていたパンをテーブルへと並べていく。 ついでに葡萄酒のボトルも置いて、晩酌の準備も整えておく。 全てを並べ終えると、風呂上がりのリューが姿を現した。 「リュー、頭は拭けた?」 「……その質問の意図がよく分からないが」 「別にそんなに真面目に捉えなくても……まぁいいか。食べよう」 僕が席を促すと素直に頷き席へとついた。

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