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39.静かな室内
「午前の鍛錬は終わった。午後は少し休む」
「うん?それはいいと思うが……」
僕は頭痛薬を飲み終えてリューを見上げる。リューはソファーで読むのかと思っていたが、違うらしい。
「飲み終わったのなら、行くぞ」
「行くって……」
「休むのだろう?一緒に行く」
「え?あぁ……」
どうやらベッドルームで、しかも一緒に寝ている方で読むということらしい。
それって、心配してくれているからなのだろうか。
(急にどうしたんだ?いつもなら別々に過ごしていると思うのだけれど、そんなに体調悪そうに見えるのか?)
僕としてはリューが側にいてくれるのはありがたいことだけれど。
顔に出ていたのか、リューが僕に視線を投げる。
「この辺りで粗相されても困る。側にいれば少しは察することができる」
「粗相って……そこまで具合は悪くないが。僕としては一緒にいてくれたら嬉しいけれど」
僕が言うとリューの動きが一瞬止まり、何かを考え込んでいる。
そして、改めて僕と目線を合わせてくる。
「嬉しいのか?」
「うん?そりゃあ、リューを見ているのは飽きないし。好きだからね」
「……そうか」
僕を観察するように見てから呟くと、リューは僕を立ち上がらせて補助するように側にいてくれる。ありがたく甘えてベッドルームへと戻ることにする。
+++
僕がベッドへと横になると、リューもベッドサイドに本を置く。隣に腰掛けてベッドの背に寄りかかると僕の顔を覗き込んできた。
「リュー……?本当にどうしたの?」
「風呂にも入ったし、休憩しているだけだ」
「そうか。じゃあ僕は少し休ませてもらう。お腹も空きそうだが、少し億劫だし」
「あぁ」
僕にだけ毛布をかけると、自分はタオルをベッドサイドテーブルへと置く代わりに本を一冊手に取った。武器の本のようだが、種類か使用方法か何かの本だろう。
「リュー……それは?」
「お前が興味がなさそうな本だ」
「バッサリ言うね……まぁいいか」
僕は目を閉じた。静寂が部屋を包む頃に、意識は静かに沈んでいく。
+++
どれくらい時間が経ったのか分からないが、眠ったおかげで頭痛もだいぶ治まった。隣を見るとリューはまだ隣にいて本を読んでいた。僕の気配に気づいて視線を向けてくる。
「ずっといたのか」
「まだ本を読み終えていない」
「そうか……」
そうは言ったが、リューが持っているのは先程と変わらない題の本だ。きっと全ての本を読んだとしてもこんなに時間がかかることはないはずだ。
(ならどうして?眠る訳でもなく、ここにいるのだろう?)
僕にはよくわからなかったが、リューは本を置くと僕の額に手を当ててきた。
「熱は上がっていない」
「ただの二日酔いだろうし。気怠いくらいだ。頭痛も治まったから大丈夫だ」
「それならいい」
リューは額から手を離し、僕の隣に寝転んだ。今度こそ眠るつもりなのだろうか?
「一日くらい何も食べなくても死にはしないだろうが、腹が空いているなら何か探してくる」
言っていることと、この体勢が合わないのでおかしくなってしまった。起き上がるくらいは何でもないのだろうが、寝転んでから聞くことではない気がして声に出して笑う。
「ハハ……作ると言わないところがリューらしい。構わないから、このまま隣にいて欲しい。いてくれるだけでいいから」
甘えるように言ってみる。どうせ嫌そうな顔をされるかと思ったが、リューは表情を変えずに俺を見ている。
「……嫌がらないのか?」
「別に……構わない」
普段よりキレがないのは気のせいだろうか?心なしか視線が戸惑っている気がする。
(何?僕がそんなに心配なのか?熱もないと確認したのに……)
僕が不思議そうな顔をしていると、リューは観察するように僕をじっと見つめてきた。
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