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第1話 プロローグ
初夏を前にして、段々と緑が色づき始めた山の中 宮本 樹 はひどく焦っていた。
「はあ、はあっ。」
ガチャガチャッ
足を絞め上げているワイヤーをなんとかはずそうとしたが、どれだけもがいてもビクともしない。
むしろ更に締め上げが強くなっている。
「痛っ、なんなんだよこれ!」
やっぱり山なんて一人で来なければよかった。
後悔ばかりがつのっていく。
(はあ、どうしよう…。)
途方に暮れ空を見上げたとき、
ガサガサッ
近くの茂みが大きく揺れた。
「えっ?」
驚いてそちらを向くと、草の隙間から鋭い目が樹を睨んでいる。
⸺あ、やばいかも
そう思った瞬間、大きな塊が樹めがけて勢い良く飛び出した。
「わぁぁぁぁ!!」
死ぬ、本気でそう思った。生理的な涙が溢れだす。
⸺なんで、こんなことにっ!!
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