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第18話

家に帰って、水春がレンタカーを返して戻ってくると、早くも日が暮れる時間になっていた。 久しぶりに遠出をしたので、晶はリビングのソファーに座り背もたれに身体を預けた。 「……疲れましたか?」 水春がコーヒーを淹れてくれる。マグを受け取ると、コーヒーの香りに身体の力が抜けた。 「慣れない事したからな」 水春もマグを持って隣に座った。 水春はテレビの電源を入れると、録画した番組を再生する。自分もだけど、真洋や水春が出ている番組のチェックだ。 それに気付いた水春は、テレビの電源を切った。 「晶さん、今日は仕事しない約束でしょう?」 「……悪ぃ、癖で……」 「…………」 水春はソファーの前のテーブルにマグを置くと、晶のマグも奪ってそこに置く。 「晶さん、今日は全然楽しそうじゃなかったですね」 そう言いながら、水春は晶が逃げられない位置に迫ってきた。 「すぐに仕事モードに入ろうとするし、オレ、結構頑張ってたんですけど」 「…………悪ぃ」 「仕事モードに入るのも、ガードが固いのも、癖なんだって分かったのでそれはいいです。なので、別方向からアプローチする事にしました」 別方向って何だよ、と言おうとした晶の唇が塞がれる。ちゅ、と音を立てて水春の唇が吸い付いてきたのだ。 別方向ってそういう事かと、晶はそれを受け入れた。水春は何度か軽くキスをすると、晶の正面に回りながら、次第にキスを深くしていく。 「ん……」 呼吸のついでに晶が思わず声を漏らすと、水春は微笑んだ。その顔に、晶の顔が熱くなる。 思わず視線を逸らしたら、頬を撫でられ、耳をくすぐられる。肩を竦めると額にキスをされた。 水春はそのキスを、頬に、耳に、首筋にと落としてくる。ゾワゾワと身体が震えて思わず声が出そうになり、唇をぎゅっと結ぶ。 「うわ……晶さん、かなり敏感ですね……可愛い」 「……っ、ん!」 首筋を舐められ思わず晶の身体が跳ねる。 (このまま、身をゆだねれば、少しは前に進めるのか?) そう思って、晶は水春の顔を両手で包み、自らキスをする。 水春は晶の行動に驚いたようだったけれど、すぐに順応し、先程よりも深いキスをくれる。 「ふ……」 水春の舌が晶の唇を舐めてくる。晶も同じようにすると、どちらからともなく舌が絡み合う。 (やば……もうイキたい) まだキスしかしていないのに、と晶は戸惑った。水春が自分に触れてくれるというだけで、十分に興奮してしまったようだ。 そうしている間にも、下半身の熱はどんどん重くなる。いっそ自分で触ってしまおうかと、手を伸ばした時だった。 『晶ちゃんは、そんな子じゃないわよね?』 「……っ!!」 晶は反射的に水春を引き離した。 「何でこのタイミングで……!」 晶は叫ぶと口元を押さえる。胃がおかしな動きをしている、気持ち悪い。 水春を押しのけてトイレへ駆け込む。何も出なかったものの、体力を消耗してその場にへたりこんだ。 「晶さん……」 思うようにいかない自分の身体に、嫌気がさす。 「…………嫌でしたか?」 「んな訳あるか、嫌だったらキスもしねーよ!」 水春の問いに、弾かれたように晶は叫んだ。そしたら、涙が溢れ出てくる。 「何なんだよ……何でずっとババアが出しゃばってくるんだ……」 「晶さん……」 水春が近くに来て、晶を抱きしめた。 「止めろ、俺今気が立ってるから……」 「お母さんが出てくる? 大丈夫、今はオレと晶さんの二人しかいません」 晶は、ああそうか、と泣きながら思う。過去に実際に言われた言葉ではあるけれど、今は物理的に離れている。 『今』言われている訳じゃない。何より、母親を自分の中に住まわせているのは晶自身だ。 「水春…………水春、仕切り直ししたい。俺、お前とセックスしたい」 「……っ、晶さん……」 泣きながらストレートに晶は言うと、水春は戸惑ったようだった。ダメか? と水春を見ると、彼はぎゅうぎゅうと抱きしめる腕に力を入れた。 「んなわけないでしょう」 すると、晶は足を掬われて抱っこされた。 「ちょっと、これは恥ずかしすぎる……!」 「暴れないで。……俺の部屋で良いですか?」 そう言いながら足を進める水春。以前も抱っこはされたけど、あの時は余裕が無かった。だから程よく筋肉が付いてる肩とか胸とか、どうしても意識してしまう。 「うー……」 晶は顔を両手で隠した。いきなりこういう甘いシチュエーションには、耐えられない。 水春が笑う。 「晶さん、何やっても可愛いから、顔を隠しても無駄ですよ」 そう言って、部屋の前で降ろされた。水春がドアを開ける。 「さ、どうぞ」 晶は少し緊張しながら、部屋に入った。

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