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第1話 ◆ 魔法少年、再び
俺は6年前、魔法少年だった。
10歳の誕生日を迎えた深夜0時、シャイニスという惑星からやって来たという、水色のキツネのような見た目をした手負いの動物に出会った。
ウルウと名乗った彼は、突然部屋に現れたかと思うと俺を魔法少年と呼び、シャイニスの征服を果たした悪の組織ダークネスを打ち倒して欲しいという驚愕の依頼をしてきた。
あまりにもスケールの大きな話に、俺はにわかには信じられず適当にあしらおうとしたのだが。そこでウルウの追手が現れ、家族がダークネスの一派による襲撃に巻き込まれそうになり、俺はあれよあれよという間に魔法少年としての活動をスタートさせてしまったのだった。
悪の組織ダークネスはシャイニスに次いで地球の征服を企んでおり、俺は自身に備わっているという光の力を呼び起こし、ウルウと共に数々のピンチを乗り越えそんな奴らと闘ってきた。
次から次へと現れるダークネスの構成員たちを倒し、経験値を積み、レベルアップをする。最終的にボスを討ち、俺は1年をかけ、見事ダークネスの地球征服を阻止することに成功した。
そして同時にダークネスの強さの源であった、使う者によって兵器にもなれば世界平和をもたらすというマジカルスターを手に入れた俺は、それを使って荒廃したシャイニスを平和で自然豊かな惑星へと復活させたのだ。
こうしてふたつの惑星には、再び平和の時代が訪れた――。
……と、ここまでが6年前に起きた、決して人には口外できない俺の冒険譚である。今の地味な俺には似つかわしくない、輝かしき少年時代の偉業だ。
「で、ウルウ。どういうことだよ」
「だから! また地球の危機を救ってほしいんだよ、那由多 」
俺が明日の高校2年生の新学期という日に備えてそろそろ寝ようかと自室に戻った時。なんと目の前に、かつて激しい戦況を共にした水色のキツネのような相棒――ウルウが現れたのだった。
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