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カナタの朝は、いつもツカサによって始まった。
部屋の鍵を閉めていても、ツカサはカナタの部屋を訪れる。
目を覚ますまで同じベッドの中に入っていて、いつだってカナタがその日初めて視界に入れるものは、ツカサの端整な顔。
カナタが早起きをしても、状況は同じ。
いつもツカサは、カナタの部屋でカナタの目覚めを待っていた。
そんなツカサだが、こう見えて家事のほとんどを担ってくれている。
食事は三食ツカサが用意をしてくれて、洗濯や掃除、買い物なども進んでしてくれた。
マスターいわく、カナタが来る前まではツカサとマスターで家事を分担していたらしい。
しかし、カナタが共に暮らすようになってからというもの……マスターが家事をしようとすれば、ツカサから怒られるようになったとか。
「ごちそうさまでした」
カナタは朝食を食べ終え、両手を合わせる。
既にダイニングには、マスターの姿がない。
ダイニングにいるのは、カナタと……。
「お粗末様でした~っ」
食事をするカナタを凝視していたツカサだけだ。
ツカサはカナタの頬へ手を伸ばし、指先でそっとつつく。
「今日もカナちゃんは可愛いなぁ。キスしたくなっちゃう」
「……今朝、オレの部屋であんなにしたじゃないですか」
「えぇ~? あんなの、キスをしたうちに入らないよ~?」
今朝も、カナタはツカサと目覚めを共有した。
生理現象として反応していた逸物を弄られ、窒息してしまいそうなほどキスをされたのだ。
カナタは、ツカサをジッと見つめる。
ちなみにカナタ本人としては、ツカサを睨んでいるつもりだ。
「そんなに熱く見つめて、どうかした? ……もしかして。キス、してほしくなっちゃった?」
しかし当然、ツカサにはノーダメージ。
頬をつついていたツカサの指が、カナタの唇に触れる。
「朝ご飯を作ったご褒美に、カナちゃんからキスをしてほしいなぁ」
ツカサは頬杖をついたまま、カナタにそんなことを要求する。
カナタは一度、どうしたものかと動きを止めた。
しかし、朝ご飯を用意してもらったのは事実。
「……ツカサさん」
カナタは頬杖をついている方とは反対の頬に向かい、ツカサへキスをする。
唇を離すと、ツカサが心底嬉しそうに微笑んだ。
「もっとほしいな」
そう言うと同時に、ツカサはカナタの唇に自身の唇を重ねる。
するとすぐに、ツカサの舌が差し込まれた。
「ん、っ」
コーヒーの匂いが、鼻腔をくすぐる。
ツカサが自分で挽いたコーヒーなのだろう。どことなく、インスタントとは違う匂いがした。
「んっ、だめです、ツカサさん……っ」
ツカサの手が、カナタの腰を撫でる。
すかさずカナタは、ツカサから距離を取ろうとした。
「なにがダメなの?」
「なに、って……っ」
「もしかしてカナちゃん、俺にエッチなことされるかと思った?」
瞬時に、カナタは顔を赤くする。
ただ腰を撫でられただけで、さすがに飛躍しすぎた。そう、気付いたからだ。
「図星? 期待しちゃったんだ? ちょっと前に射精したばっかりなのに、カナちゃんは元気だねぇ?」
「そんなこと、言わないでください……っ」
「あれっ、否定しないんだ? なにそれ、すっごく可愛い」
目を丸くした後、ツカサはその目をゆっくりと細める。
「本当は少し揶揄うだけのつもりだったけど、そんなに可愛い反応されたら手を出したくなっちゃうじゃん。カナちゃんの小悪魔さん」
ガタッと、椅子の動く音が鳴る。
「マスターがいつ戻ってくるか分からないし、手早く済ませようか」
そう囁いた後、ツカサはカナタの下半身へ手を伸ばした。
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