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 着替えを済ませたカナタが車に戻って来た時には既に、ツカサも運転席に戻っていた。 「おかえり、カナちゃん。……飲み物、お茶で良かったかな?」 「は、はい……っ」 「……着替え、手伝ってほしかった?」 「そんなんじゃ……っ! ただ、その……はっ、恥ず、かしい……からっ」  まさか車の中で恋人の逸物を舐め、胸を触られていたとは言えほとんどなにもされていないはずの自分までもが達してしまうなんて。恥ずかしがり屋のカナタが、平常心を装えるはずがなかった。  自分用の飲み物も用意していたらしいツカサは、缶コーヒーのプルタブを引きながら小首を傾げる。 「別にお漏らししたワケじゃないでしょ? なにも恥ずかしがる必要なんてないよ」 「大差ないですよ……っ」 「そう? あっ、着替えた服ちょうだい? 分けておくための袋も用意してあるから」  なにもかも、用意周到だ。そんな余裕が、カナタはほんの少しだけ恨めしく思えてくる。……明らかな八つ当たりだが。  ツカサに着替えた服を渡した後、カナタはツカサが買ってきてくれたお茶を飲む。  運転席に戻って来たツカサは、お茶を飲んだカナタに顔を寄せた。 「カナちゃん、キスしよ?」 「でもオレ、さっきツカサさんの……アレ、咥えちゃいましたし、飲みましたよ?」 「俺はあんまりそういうの気にしないかなぁ。カナちゃんが口に含んだものはなんだってもう、全部カナちゃんのものだから」  そう言い、ツカサはカナタにキスをする。  それからまるで『言った通りでしょう?』と証明でもするかのように、ツカサはカナタの口腔に舌を差し入れた。 「……カナちゃん、お茶の味がする」 「そう言うツカサさんは、ちょっと苦いです……っ」 「えっ? もしかして、精子の感想? なんか、改まって言われると照れちゃうな……っ」 「コーヒーですっ!」  冗談を本気で捉えてしまうほど、カナタには余裕がなかったらしい。しかし、そんなムキになっているカナタにもツカサは笑みを浮かべている。 「さてと! お互いにスッキリしたワケだし、出発しよっかっ!」 「そんな大きな声で恥ずかしいことを言わないでくださいっ!」 「だって、ご実家に着いたらカナちゃんとイチャイチャできないんだよ? 今くらいさせてよ、イチャイチャ」  またしても、ツカサは子犬のような目でカナタを見た。なんとしてでも許諾をもぎ取るつもりだ。 「カナちゃんが恥ずかしくて真っ赤になっている顔、もっと見たい。……辱めちゃ、ダメ?」  カナタは「うっ」と呻いた後、すぐにツカサから顔を背けた。 「ツカサさんって、恥ずかしいなって思うこととかないんですか……っ?」 「いいねっ、仕返し? 俺の恥ずかしいエピソードでも語ろうか?」 「えっ? そ、そんなあっさりと? いいんですかっ?」 「いいよ~っ。じゃあ、先ずはエピソードの第三位から話そうかっ」  ツカサは車のエンジンをかけてから、運転を再開する。  そして、あまりにも明るい声で語り始めたのだった。 「──初めて逆レイプされた時、俺って全然イけなかったんだよねぇ。いやぁ、男としては恥ずかしい限りだよっ」 「──この話題、やめましょうかっ!」  思わず、カナタがストップをかけてしまうほど。……あまりにも、コメントに困る【恥ずかしいエピソード】を。

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