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クラウスは銃をしまいながら、ヴォルツより前に歩き出して先導する。すっかり人が変わったかのように、陽気な雰囲気を醸し出している。
そんな彼の後ろを、ヴォルツはぴったりと距離を保ちながらついていく。
路地はどんどん不気味な雰囲気を増していき、普通の人は誰も寄り付かなさそうである。それでも、このような場所に慣れている様子のヴォルツは表情を変えず、目の前の男から視線を逸らさない。
再び角を曲がり、先ほどより少し広い場所へと出る。行き止まりになっているそこには質素なドアが待ち構えていたかのようにぽつりとあり、クラウスがそこへ向かっていく。
どうやら、彼の目的地はここであるようだ。錆が擦れるような音を響かせながら中へと入っていく。
換気のされていない、籠もった臭いが人のいる空気を感じさせない部屋が広がる。外とは異質の空間に、短い黒髪の男と、肩くらいの金髪の人物がソファで寛いでいる。二人は入ってきたヴォルツの姿を見るなり、気付かれないように凝視する。
「お前らだけか。ハインはどうした?」
「奥にいる。……そいつは何者だ?」
「エリサんところのだ」
「エリサ……。そうか。俺が呼んでくる」
「頼んだぞ、ロン」
ロンと呼ばれた黒髪の男はエリサの名を聞くなり立ち上がり、奥の廊下へと進んでいく。
自らの役目が終わり、クラウスはやれやれといった様子で彼が座っていた場所へ腰掛ける。もう自分のやることはないと言わんばかりに、ヴォルツを気に掛ける様子はなかった。
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