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「見慣れないやつだな。俺の気配に気付いたことは褒めてやる」  男の低い声がそうヴォルツに告げる。同時に彼の足音が、ヴォルツに近付いてきていることを知らせる。 「俺は人に頼まれてここへ来た。その証拠に、ズボンの右ポケットにこの場所を示す地図が入っている。信用ならないなら、お前の指示通りに動く」 「指示通り……か。ははっ、そしたら自分でそのメモとやらを出せ。安心しろ、話はある程度通っている」  ヴォルツは言われた通りにポケットからメモを取り出し、右手で持ちながら再び手を挙げる。  真後ろまで男が近付き、銃口をヴォルツに向けたままそのメモを確認する。 「エリサんところの少年。手を下ろしてこちらを向け」  再び男はヴォルツに指示を出す。  言われた行為をすると、ようやくヴォルツの目に男の姿が入ってくる。  黒い帽子にサングラス、少しくたびれた黒いスーツを纏った男は、顎ひげに手をやりながらニヤニヤとヴォルツを見ていた。 「俺はクラウスだ。エリサんところから人が来るっていうんで迎えに来た」 「……俺はヴォルツ」 「ヴォルツな。よろしくよ。んじゃ、この先に案内しよう」

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