郊外の街にしては人のいる街の中心は、そこそこの人で賑わっていた。どんよりした曇り空ではあるが、買い物をする者や会話を楽しんでいる者がおり、明るい雰囲気を出している。 　そんな中、人混みに紛れつつも気配を消して歩くヴォルツの姿があった。誰も気に留めることはない、彼自身もただ目的地へと向かっている、ただそれだけである。 　傍から見れば、ラフな上着とズボン姿の少年であるヴォルツ。服の内側には銃があることに誰も気付いている様子はない。 　平然とした様子で最も人通りの多いところを抜け、一つ裏の道へと入っていく。もうそこは別世界のような雰囲気を纏っており、何も知らない人からすれば恐怖すら感じる空気である。 　だが、ヴォルツは怖気づいた様子もなく、変わらない足取りでどんどん進んでいく。 　もう一度角を曲がったところで、ピタリと歩みを止める。 　どうやらこの場所が目的地のようだ。 　細い裏路地には何もなく、一体ここに何があるというのか。そんな疑問が浮かび上がる。 　しばらくその場から動かず、何もないと確信する。再び動き出そうとしたそのとき、ヴォルツは背後に気配を感じた。銃に手を掛けることなく、両手を挙げる。 　ヴォルツの後ろには、銃を構えた男が少し離れた距離で立っていた。少しでも動けば撃つ、男の放つ殺気がそう語り掛けていた。