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 曇天の中、ヴォルツはいつものように的を相手に練習をしていた。どこか調子が悪いのか、しきりに銃を確認しながら何度も撃ち抜いていく。 「ヴォルツ」  鋭い声でエリサが話し掛ける。どこか不機嫌な彼女は、苛立っているように見えた。 「この前の任務のザマは何だ。狙い以外にも殺したようだな」 「見つからずに任務を達成するために必要だったことだ」 「私はそんなことをしろと言ったつもりはない。お前は狙いを言われた通りに殺すだけの人形だ」  その言葉に、ヴォルツは怒りが湧き上がった。自分自身ではエリサの人形だと思っていたが、それを本人に言われるのはまた違う。思わずエリサに近寄り、首元をぐっと掴み上げる。 「俺は……エリサの指示に従った」  短い一言に、怒りが込められている。言われた通りのことを遂行した。いつになく獣じみている眼差しがそれを主張する。  しかし、エリサは全く怖気づく様子もなく、気が済むまでヴォルツの反論を窺っていた。しばらく無言の時間が続き、これ以上何もヴォルツから言葉がないと分かると、溜め息を付いてから再び口を開く。 「それができていなかったからこうして話している」 「俺は……」  突然力が入らなくなったのか、掴んでいた手が離れる。ヴォルツはエリサに背を向け、そのまま歩き出して離れていった。

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