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「俺は孕み腹に興味はない。君をここで襲う気はない。ただ返事をするだけでいい。どうして、そのゴミが欲しいんだ?」
「あ、の……」
手にした空き缶をきゅっと握り、少年がたどたどしく口を閉口させる。半透明の紫水の瞳が、また伏せられてしまった。グレンは必要以上に近づかず、少年の返事を根気強く待った。
人間に興味がないグレンの意思を、ようやく感じ取ったのか。空き缶を握る手から力を抜いた少年が、やっと薄い口を開いた。
「あの、これで、みんなで……遊ぼうと、思って」
「遊ぶ?」
遊ぶとは、孕み腹同士でか。考えもつかない返答だった。目を丸くしたグレンの疑問に、少年はすぐさま頷く。
「昨日、ここから逃げ出した子が、帰ってきて。でもすごく落ちこんでて、周りのみんなも、どんどん暗くなって。それで……こ、この空き缶が、欲しくて」
トゥラドーラ塔に隔離された孕み腹か。数日を経て拷問から解放されたと、グレン自身が皇帝に報告したばかりだった。おそらく、落ちこむというより情緒不安定になっているのだ。半狂乱に陥ってもおかしくない。
トゥラドーラで実行される過酷な拷問は獣人でも根をあげる。遊びの一環として、獣人が孕み腹に行う懲罰とは重みが違う。魔術師がついているため、よほどでない限り命は落とさないが、逆に言えば永遠に続く苦痛を味わう。
孕み腹への仕置きは性的拷問が中心だった。限界以上に拡張された肛門をずたずたに引き裂かれ、口腔や尿道も度を越して責め立てられる。拷問官によっては耳の穴も鼻の穴も使えると言っていた。
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