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 自然に子を成す雌の獣人は、皇族や貴族が金と権力で囲いこむ例が多い。その他大勢の民衆は雄同士で番となり子を成す。  もちろん数年かけて、互いの子を作る番もいる。そうなると、ほとんどの番がひとり、もしくは二人の子しか設けられない。ときに三人以上の子を成す番もいるが、一方で、何年かけても子を成せないものたちもいる。  これでは獣人の民衆は減少しないかもしれないが、増える数は少なくなる。わずかでも出生の足しとして補うのが、定期的に獣人を産み続ける孕み腹だった。  それを裏付けするように、小国だったシーデリウムは、孕み腹を導入してから年々緩やかな増加傾向をたどる。民衆は減少することなく、現在では帝国となった。 「今現在は良いかもしれない。なれども孕み腹がなくなれば、いずれ遠い未来、我ら獣人は減少するかもしれませんぞ」 「そのとおりだ。やはり孕み腹は、我が国の繁栄のため、補充し続けねば」  孕み腹を容認する意見に心がささくれ立つ。自国の繁栄とはいえ、獣人の子を産ませるために、人間を使い続けるなど許されない。だとしても、孕み腹は子孫繁栄を名目にする。核種胎の問題が解決できなければ、どうにもならない。  核種胎は魔術師の管轄だ。グレンでは完全に塞がった先を、内密に相談した相手がコルネーリォだった。  目線を低くしたまま、グレンは魔術師総帥の後ろに控えるコルネーリォに視線を送る。グレンの合図を受け取り、静観する魔術師が小さく頷いた。  陛下、と頭を下げながら中央へ歩み出たのは、若草色の瞳を持つコルネーリォだった。 「それにつきましては、我ら宮廷魔術師よりご報告がございます」 「報告だと?」  論争をじっくり吟味する皇帝が、金色の耳をぴくりと動かした。皇帝の目を正面にして、先の論を促されたコルネーリォが、グレンと並び立って深く腰を曲げた。 「さようでございます。我ら魔術師は、このところ、核種胎の新たな可能性に力を入れております。孕み腹に植えつけた核種胎のデータから、獣人の特性を調べ、強い力に対応し得る核種胎を開発できぬかと。成功すれば孕み腹を使わなくとも、獣人同士の子種を育てられる核が、できあがりましょう」  個々が持つ獣性の強さはひとりずつ違う。そのうえ種族によっても強さが変わる。ひとりひとりの獣性を調べ、無数にある種族の特性を、核種胎の作用と掛け合わすことは不可能だった。  子が実りやすい獣性の相性は探られず、核種胎が活性化しやすい特性もわからず。核種胎への影響がどれほどあるかを正確に把握できなかったのだ。だが、幾多もある獣人のなかで、最強の皇帝のデータを得た。

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