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「まぁな。もしもだ。核種胎を持って帰れるんだったら、俺は一つもらうぞ」
「はぁぁぁー? やだこの人怖いんですけど。それってヌプンタで、核種胎を使うかもってことぉ? やめてよね、物騒だよ」
盛大に顔を歪めたパーシーが、とげとげしい視線をユージンに送る。核種胎で、何人の少年が命を落としたか。忘れたんじゃないか、そんな目だ。しかしユージンは両肩をあげ、軽く受け流した。
「忘れてないって、覚えてるよ。そこは実証済みだ。ヌプンタで、俺が核種胎を使いたいのは……、こいつだから」
「え」
「えっ」
「はぁぁー!?」
「ぅげっ」
ルトとエミル、パーシーとラザの、驚愕の声が同時に響く。さりげなく、ユージンが抱いた腰はラザだ。
くぃと抱き寄せられたラザは、目玉が飛び出しそうなほど慌てふためいていた。細い腰に絡まった指先を、一本ずつ引き剥がし、余った片腕でばしばしとユージンの背中を叩く。
「いてててて」
「あほぼけっ、ユージン、どアホ! はっ、なっ、せっ! バッカじゃねぇ、バッカじゃねぇ、バッカじゃねぇ!! ってかほんとアホだろ!」
口では全面拒否しているが、叫ぶラザの顔は、夜空の外灯でもはっきりわかるくらい真っ赤っ赤。まんざらでもなさそうなラザの様子に、間近で見やるユージンの顔がにやけている。
何気にいちゃつく様子にあっけにとられていたら、やがてパーシーがくすくすと肩を揺らした。
「はいご馳走さまー! ユージンの秘めた恋って、ラザだったんだぁ、納得ぅー」
「納得ぅ、じゃねぇし!」
「まぁなぁ。ルトが秘密の力を打ち明けてくれたからな、俺もついでに言っとこうかと」
「お前はバッカじゃねぇっ!」
「――ふふっ」
三人のにぎやかなやり取りに、はじめこそ唖然としていたエミルが声をたてて笑った。笑いの輪は次第に連鎖し、次いで、ルトもパーシーも笑い出す。
ユージンは相変わらずにやけ、ラザにちょっかいを出していて、ラザは赤ら顔で頬を膨らませた。そんなことをしても可愛いだけなのに。
ルトたちの最後の夜はどこまでも続く、澄んだ星空に吸いこまれる。別れを惜しむように遠い天上までこだまして、暗い空を照らす、月の光に包まれた。
***
「孕み腹はこれに着替えろ」
布一枚のワンピースとは比べ物にならない。上下にわかれた上等な服だ。広い大広間で、ルトたちは横一列に並ばされた。
目の前には複数の、獣人と魔術師が向かい合う。ラシャドや虎の隊長、コルネーリォも見えた。
一夜が明けた、旅立ちの日だ。並ぶ少年たちは戸惑いつつも、新品の服を握り締める。緊張と期待で、どこからか、ごくりと喉が鳴る音が聞こえた。
恐るおそる魔術師から渡された服へ着替える。ずっと薄布一枚で過ごす毎日だったから、逆に落ち着かなくて変な気分だ。
眉根を下げ、口をつぐみ。不安げに周りを見回す少年たちの前で、魔術師の長らしき年配者が中央に一歩進んだ。
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