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【序-④】意識

 戸惑った僕は、思わずまじまじと恢斗を見た。 「簡潔に答えて欲しい」 「……別に」 「では、俺が嫌いか?」 「そんな事はありませんけど……?」 「――嫌いになるほど関心が持てないか?」 「……そ、そういうわけじゃ――あの、そろそろ寝ませんか?」 「眠いのか?」 「……」 「俺は親睦を深めるという目的を達成したいが?」  その言葉に、僕は目を丸くしたと思う。ただの名目だと信じきっていたし、僕の頭はSEXでいっぱいだったからだ。そんな自分が恥ずかしくなった。 「恢斗さんこそ、僕の事が憎いのでは?」 「どうして?」 「僕が発情していなかったのなら、この関係は無いわけで――」 「? 発情を誘発させたのは俺なのに? 何故?」 「えっ」 「俺がお前の発情に当てられたなどという祖父のデマを鵜呑みにしているのか?」 「……」 「この関係は、俺が望んだものだ。本意でないのは、紫樹だろう?」  恢斗が呆れたような顔になった。僕は困惑するしかない。 「望んだって、どうして?」 「何が?」 「この縁組には利点は少ないですし……」 「……」 「お互い、元々別の相手を探す予定だったわけで……」 「利害関係を抜きにして考えてくれないか?」 「?」 「――俺はお前が運命の番だと確信して、手に入れておかなければならないと直感した。こう言えば分かるか?」 「すみません、よく分かりません」 「つまりお前に一目惚れした。好きだ」 「え!?」 「……そうか。伝わっていなかったという事か」  驚愕した僕は、何を言えば良いのか分からなくなってしまった。 「俺は紫樹に、もっと気楽に話して欲しいし、連絡も出来れば毎日とりたい」 「……」 「正直、手に入れておかなかったら一生後悔すると思ったし、今も一方的で悪いとは思っているが、手放す気はないから選択に悔いはないが――俺は、紫樹に俺を好きになって欲しいんだ」  愛の告白をされたのは、人生で初めての事だった。衝撃的すぎて、僕は真っ赤になった自信がある。 「か、恢斗さん、あの……」 「恢斗で良い」 「……」  なおその後、僕達の間からは、再び会話が消失した。恢斗が黙ってしまって、僕は言葉が思い浮かばず何を言おうとしたかも忘れてしまったからだ。無言で二人、お茶を飲んでいた。  結果、僕の心拍数が酷い事になった。意識するなという方が無理である。これまで恋愛的な意味合いで、僕は宝灘恢斗という人間を見た事が無かったのだ。恋愛より先に初体験を済ませてしまった僕には、未知の経験すぎて、そういう意識が全然無かったのである。僕は、子供だったのだろう……。  恢斗は、また少し背が伸びていた。もう二次性徴は終わったのだろうと勝手に思っていたが、絶対に前より高い。顔立ちも少し大人っぽくなった。形の良い目、整った顔立ち……端的に言って、格好良いと評して良いだろう。  一方の僕は、Ωにしては背が高いが、βの平均には届かないし、αから見たら低いだろう。筋肉はあまり付かない。Ωだからというよりも、母もこの体型なので、そういうスタイルなのではないかと考えている。僕は目元は母、その他は父に似た顔立ちだ。僕は自分の容姿については、良いとも悪いとも思わない。いつも鏡で見ているのはこの顔なので、普通だという感覚だ。  そのようにして、僕はまず、外見を比較してみた。 「なんだ?」 「え、あ……」 「真っ赤な顔でそんなに見られると期待する」 「!」 「――そろそろ寝るか」 「は、はい!」  慌てて頷き、僕は立ち上がった。そしてベッドへと振り返り、更に緊張した。この流れの場合、SEXはするのだろうか? それともしないのだろうか? 「紫樹」  後ろから抱きしめられたのは、その時の事だった。ふわりと良い匂いがした。そのまま舌でうなじをなぞられる。すると背筋がゾクゾクとし、すぐに体が熱を帯び始めた。後ろから恢斗は器用に僕の服を乱していき、そのまま正面にあった寝台へと押し倒した。  そして僕を押しつぶすようにしながら――僕のうなじに噛み付いた。 「ひゃ、ぅ」  ギュッとシーツを握った僕は、こみ上げてきた熱に怯える。経験するのは、二度目となる熱だ。恢斗は僕のうなじを舐めたり甘く噛んだりしながら、片手で僕の陰茎を扱き始めた。すぐに硬くなってしまい、僕は涙ぐんだ。気持ちが良い。 「あ、あぁ……ぁ……」  先走りの液が、シーツに垂れていく。そう思っていたら、もう一方の手の指を、後孔へと挿入された。すんなりと入ってきた二本の指が、僕の内側をかき混ぜる。 「ぅ、ぁァ、ぁ……んン……は」 「辛いか?」 「うん」 「じゃあゆっくり慣らして――」 「違、っ、ぁ……体が熱くて辛……早く……」 「!」  僕は潤んだ瞳で振り返り、縋るように恢斗を見た。すると驚いた顔をされた後、とても嬉しそうな笑顔を向けられた。一瞬それに見惚れた僕は、直後、最初の日に見た時同様、獰猛になった彼の瞳を見てしまった。 「良いんだな?」  指を引き抜くと、恢斗が自分の服を緩めた。そして、剛直を僕の菊門にあてがう。 「う、うん……あ、ああ!!」  僕が同意した時には、もう貫かれていた。僕は再びシーツを握り締め、衝撃に耐える。ゆっくりと挿ってきた恢斗の陰茎が、根元まで挿りきる頃には、僕の体は蕩けてしまいそうになっていた。 「あ、ああ……あ、ッ、ぅあ、あン――!」 「平気か?」 「平気じゃない、あ、あ、っ……ダメ、もう、あア!! あ、ああ」 「――気持ち良すぎて?」 「うん」 「俺もだ」  恢斗の動きが激しくなった。そのまま感じる場所を思いっきり突き上げられて、僕は果てた。

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