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出会い

 早ざきの桜が満開を過ぎた高校の入学式。  家から電車とバスを乗り継いだ希望の進学校の入学式。  壇上に上がった新入生代表に式場にいた生徒が騒ついた。  同じ制服に身を包んでいるはずなのに、その存在は異質で誰もがその魅力に取り憑かれた。声を聞けば聞き漏らすまいと耳を傾けた。  それは同じ新入生だけじゃない。付き添った保護者もその魅力の虜になった。  有名な進学校だけあって、優秀な人材は集まりやすい。  その中でも、世の中に一握りしかいないα性は数人しか在籍していない。その一人が、新入生代表挨拶を務めた、桐生彰人(キリュウ アキヒト)だった。  惹きつけられてやまない。  その声を聞いた途端に耳が熱くなり、全身の血液が熱くなった。  Ωの性を抑制する薬を飲んでいなければ、その場で発情していたかもしれないほどの衝撃だった。  あの人は、僕の運命かもしれない。  その場にいたΩ性は皆そう思ったかもしれない。  世界には男女の性とは別に、眉目秀麗で頭脳明晰なα性と底辺のΩ性の6つの性に分類されている。  α性は生まれながらのエリートで、誰からも祝福され、世界の性の頂点に立っている数の少ない超エリートだ。その次に多いのはβ。性に翻弄されない普通の男女だ。そして、性の底辺のΩ性。Ωはαと対で数は少ないが、3ヶ月に1度の発情期をもち、その間はセックス以外のことは考えられなくなる。発情期によるヒートで頂点のαをも自分に引きつけるフェロモンを発するが、その発情期のせいで要職につくことは難かしく、αやβからは蔑まれている。  街の中で誤ってヒートを起こしてαやβに襲われても比はΩにあるとされる。  Ωにとって理不尽な世の中でしかないのだ。  Ωが世の中に認められる方法はαと番になること。番になればαの庇護を受けられる上に、発情期に苦しめられることもなくなる。番になれば他の性のフェロモンに惑わされることもない。Ωだけの得ではない。Ωと番い子どもを作ればαかΩの子どもが産まれる。徐々に人口が減りつつあるαにとって子孫や後継者のαは喉から手が出るほど欲しい存在だ。  Ωの女性は重宝されるが、Ωの男性は子どもを産むことはできるが番えることはまず難しい。相手が見つからないことが多いからだ。  そんなΩが一筋の希望として、僅かに信じているものがある。  『運命の番』だ。  産まれた時から決められた、引き付け合い、出会い、惹かれ合う運命の相手。  他の誰かと番っていても、恋人同士でも、出会ってしまえば引きつけ合ってしまう。  僕の運命が、桐生彰人ならいいのに。  あの芳醇な香りに包まれたい。あのαが欲しい。  僕は男のΩだ。  桐生とは幸運なことに同じクラスだった。  先生からの信頼も厚く、成績は優秀でスポーツも万能。家柄も申し分なく、送迎されて通っていた。 「沢木? 傘はないのか?」

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