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引かれ合う運命

「本当に?」  この2年間の間にこっそり会っていて子どもまで作ったということはないだろうか。 「お前はずっと側にいただろう。お前が一番よく知っているはずだ」  桐生のスケジュール、行動は全て把握している。だから、こっそり2人で会うなんてことはなかった。 「じゃあ、あの子どもは?」 「子どもは分からない。1歳と言っていたから俺の子どもじゃない」  桐生と出会ったのは2年前だ。  番ではないΩとαにも子どもができることはあるが、稀だ。  それに男性Ωは妊娠しにくく、流産も多い。誰かの子どもを預かっているようでもない。 「今は、幸せだと言っていた」  桐生は小さくつぶやいた。 「ユキが、今のまま幸せならこのまま手放してもいいと思う」  本心だろうか。2年間ずっと探し求めていたのに。  僕を番だと紹介したのは運命の番を諦めるためだろうか。  期待しても、いいのだろうか。  だけど、こんなにもバース性は互いを求めている。  無理矢理引き裂かれた運命の番は壊れてしまうと、病んでしまうと聞いたことがある。 「話を……話を聞いてからでもいいんじゃないですか?」 「沢木?」  桐生のすぐ横に立つと沢木が心配そうに見上げた。 「僕はあなたを知っています。あなたがどんなに運命の番を求めてきたのか。どんなに手を尽くして努力してきたか」  桐生の膝に置かれた手を取った。  普段、触れることのない桐生。  体温の高い桐生。 「ユキの幸せを願う気持ちは、僕があなたの幸せを願う気持ちと同じです」  だけど、交わることはないのだ。  すれ違って並行しているだけ。  桐生の手を握りしめた。 「今日、今日だけ説得させてほしい。運命の番を信じさせてほしい」  桐生は言いながら僕の手を握り返した。 「求める物は同じです」  僕は桐生の手を離した。  あなたが往生際悪くすがるなら、僕も桐生に縋る。  今日だけ、というなら今日だけ。  今日が最後だろう。  今日を最後に僕はこの運命から逃れることができる。

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