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第12話
リゼロンは巡った月日を思い出す。例えば、小さな子供が犬を追って森に迷い込んで来た日や、彼が嬉しそうに押し花を見せて、リゼロンにもあげると小さな指が差し出してきた日、身も心も傷付いているのを抱きしめたあの温もり、そして彼が母を助けて欲しいと懇願する姿――。
助けようと思った事に、偽りは無い。話を聞いている限り、精霊の悪戯である可能性は高かった。万が一そうでなかったとしても対処のいくつかは想定していたし、命にかかわるとは考えられなかった。なんとかしてやれると、思っていたのだ。
しかし現実は、レオーネを傷付けることばかりになってしまった。それを悔いる気持ちにもまた、嘘偽りなど有ろうものか。だがそれを謝罪はしても、許されるなどとは思えもしない。彼に憎まれて当然のことはした。だからこうして憎しみを向けられること自体には、諦めもつくし受け入れる用意も無かったわけではない。
しかし。
「……っ、う、……レオーネ……ッ」
こういった形になることは、想定していなかった。リゼロンは後ろ手に縛られ、布で目を覆われたままその名を呼んだ。こうなってしまった以上、何を言ってもレオーネがこの行為を止めるとは思えない。それでも、制止を繰り返してしまう。こんなことは、レオーネにとって良くないのだ。
「レオーネ、よせ、っ、ぅ、……っ!」
全身は媚薬の熱に侵され、目隠しをされ。胎内には楔を押し込まれている状態で、身体は刺激に対し過敏で従順だ。先程見つけられてしまった弱点の耳に指を這わされ、内側や裏側を爪の先で掠められるだけで身体が震えそうになる。あられもない声ばかりは抑えねばならないと耐えることが精いっぱいで、言葉さえ作れなくなる。
悪いことには刺激を受けると、胎内が蠢いて内部からリゼロンを責める。正直に言ってしまえば、気持ちがいいのだ。口が裂けてもそんなことは言えないけれど。ぐっと唇を噛み締めて耐えようとするのに、レオーネは決して手を止めてはくれない。
「……ッ、ァ、……!」
ぬる、と濡れた指先がリゼロンの胸の頂に触れる。恐らく媚薬を纏った指が、既にぷくりと勃ち上がったそこを撫で始める。その優しい刺激でさえ、今のリゼロンには快感に繋がった。声を抑えても熱い吐息が溢れ出て、恐らくレオーネにもリゼロンがどういう状況であるかは筒抜けだろう。
最初はわざと掠めるように、それから直接触れて、くりくりと撫でられる。びく、と肩が震えたのに気を良くしたのか、それからは上下に弾かれたり、押し潰されたり。そのもどかしい刺激が、胸から始まって腰の奥へと届き、きゅうと胎内が悦びに蠢く。すると内壁を張り型が撫で上げるのだ。リゼロンは手を握りしめて堪えようとするけれど、レオーネの手が止まってくれないのだから抗いようが無い。
「……っ、く、ぅ……っ」
せめて声だけでも抑えようとするのに、レオーネが胸の頂を摘まもうとする。濡れたそれは滑ってしまうから、ぬる、指から逃げてしまうのだけれど。その刺激がどうにもたまらない。
びくん、と身体が跳ね、逃げるように身を動かせばかえって胸を差し出すような姿勢になる。するとレオーネがそればかりを繰り返すものだから、リゼロンは弱弱しく首を振りながら必死に声を殺す以外のことが何もできなくなった。
「ふ、……っ、んん、ぅ、……っ!」
執拗に片方の胸をいじられ、ようやく手を離してくれたと思い、深く息を吐き出すと今度は反対側の胸をいたぶられる。絶え間無い刺激はしかし決定的なものでもなく、身体が跳ねる度に内部を抉られることで全身が熱に侵されていくけれど、快感ばかりが高まりその解放を得られない。もどかしさに身を捩っても殆ど意味は無く、レオーネの指から逃げられないし、かといってそれ以上のことも起こらない。
そういう責めなのだろう、とは理解している。しているが、耐えられるかといえば別の問題だ。目隠しで見えなくても自分の性器が痛いほどに張り詰めているのを感じる。解放を求めて身体が高みを求めているけれど、屈するわけにもいかない。しかしレオーネの指は止まることがなく、休むこともできなかった。
「……っぁ、そこばかり……っ」
また摘み上げられて、びくりとのけぞった拍子に思わず言葉が漏れた。胎内が疼いて仕方ない。レオーネの指から逃れたくて身を捩っても、的確に責められるし、動くことでより不規則な刺激に身悶えることになった。
「ひ、ぃ、っ、レオーネっ、やめ、もうやめよ……っ!」
執拗な責めに耐えられず、身を捩る。制止したところで聞いてくれるとも思っていないが、言わずにはいられなかった。たっぷりと媚薬で濡らされたそこはすっかり性感帯に変わり果てており、触られるだけでどうにかなりそうなのだ。
それにもう、悔しいことに出したくてたまらない。はしたなく身を捩り脚を擦りつけてしまうのを必死に耐えているけれど、それも時間の問題のように思われて、リゼロンはレオーネから逃れようともがいた。無駄な抵抗だとわかっていても。
すると、ようやっとレオーネの手が離れた。ハァハァと荒い呼吸を繰り返しながら気配を伺っていると、レオーネが何かを手に取っている音がする。まだ何かするつもりなのだろう。リゼロンは己の身を庇うように、自然と後ろ手のままうつ伏せになろうとした。
「……っ、ひあ! ……ッ!」
うつ伏せになろうとしてしまったことで、内部の張り型が動いて内壁を擦る。それで思わず悲鳴が漏れてしまったのを、必死で呑み込む。姿勢が変わったことで、敏感な場所を直接嬲るようになってしまった。どうしたら、この刺激から逃れられるのか。考えてもわからず、そのままの姿勢で動けない。
「リゼロン」
そうこうするうちにレオーネが傍に戻って来ていたようだ。耳元で名を呼ばれ、ゾクりと震えたリゼロンを、その手が掴む。
「レオ、……っ、ああ、っ、……くうぅう……」
うつ伏せになろうとしていた姿勢を引っ張られ、あっけなくまた横向きに戻される。それでまた胎内が抉られて、耐えるリゼロンの太腿にレオーネの指が触れた。
「ぁあ、あ、レオーネ、だめだ、だめ、」
そろりと太腿の内側に手が滑る。心とは裏腹に、身体が期待で震えてしまう。そこに触って欲しい、楽にして欲しいと訴えて。それに応えるように、レオーネの手が優しくリゼロンの熱に絡みついて――。
「……っ⁉ ひい、ぃ、……っ、レオーネ、なに、なにを……っ!」
きゅう、と性器の根元を圧迫感が襲う。何かで縛られたのか、着けられたのか。わからないが、とにかくこのままではまずいという焦燥感が全身に満ちる。恐らく、このままでは出すことができない。
それは、解放が来ないということだ。
「い、いやだ、やめてくれ、レオーネ、……っ、ひっ!」
弱弱しく首を振っているリゼロンをよそに、胸に再び触れるものが有る。しかしそれは指ではなかった。もっと熱く濡れた、何かが敏感なそれを優しく撫でる。
「……っ! ……レ、オーネぇ、ならぬぅ……っ」
それがレオーネの舌であることを認識し、リゼロンは制止しながらも動けなくなった。つまり、胸元にレオーネの顔が有るのだ。暴れたら、彼を傷付けてしまうかもしれない――。そう思うと、逃げたいのに、身動きが取れない。
「やめ、や、あ、ああっ、あ、ダメだ、だめぇええ……っ!」
ちゅう、と唇で吸い付かれ、嬌声が漏れた。逃れようとして胸を反らすと、レオーネはもう片方を指で弄び始める。リゼロンは「いやだ」と繰り返しながら、それでも震えて悶えることしかできない。
唇で挟まれて吸い上げられ。舌先で転がされ、潰される。もう片方を指で同じようにされたり、あるいは交互に責められたり。リゼロンはその度小さな悲鳴を堪えようとしたけれど、どうしても零れてしまう。せめて甘い喘ぎだけは出すまいと思うのに、気持ち良くて、もどかしくてしかたないのだ。
もっとしてほしい、けれど、本当は出させてほしい。頭の中ではそんなことが渦巻いているけれど、とても口には出せない。言ってしまえば、何もかもが壊れてしまいそうで。リゼロンは目隠しの下で涙を滲ませながら、唇を噛み締めた。
「……リゼロン」
「ひ、……っぅ、」
ようやくレオーネが口を離してくれた。そしてまた弱い耳元で囁かれる。
「話してくれたら、止めれるんだぞ」
「……っ、い、言えぬ、というのに、」
「なら、仕方ないな……」
「待て、待てレオーネ、……っ、ふ、ぅ……!」
耳元から遠ざかって行く気配に、また胸を責められるのかと身構えたが、レオーネがそのまま口付けてきたからリゼロンは不意を突かれてしまった。唇を割って舌が潜り込んできて、逃げ惑う舌が絡めとられる。角度を変えながら何度も何度も唇を奪われ、口内を舌で犯される。
「ふ、……んん、ぅ、……ン、んぅうう……⁉」
しばらくキスをされていると、突然リゼロンの身体をぞくりとした強い快感が襲った。わけもわからないでいると、レオーネが舌先で口内を撫でる。それがたまらなく気持ちいい。口を塞がれたまま悲鳴を上げるが、それもまたレオーネに呑み込まれてしまって、逃げ場が無い。
何が、起こって。キスをしているだけなのに。
リゼロンは熱い頭をなんとか動かし、そして気付く。レオーネは媚薬を塗り込んだ胸を舐めていた。そしてそのままキスを。だから口内にも媚薬が……。
「んぅう、う、……っ、は、……っれお、ね……っ」
そこまで考えたところでようやくレオーネが口を離してくれた。荒い呼吸で名を呼んだけれど、蕩けた甘い声になってしまうのをどうしようもない。レオーネは小さく笑って、「口の中も気持ちよくなるんだな」と呟いた。
気付かれている。その事実に青褪めている間に、リゼロンの唇をレオーネの指がなぞった。嫌な予感がして口を閉じようとしたが間に合わず、口内に指が侵入する。
「んうぅ、……っぁう、ぅ……っ」
これでは口を閉じられず、声が抑えられない。その上、口内まで敏感になっているのだ。こんな状態で責められたら、自分がどうなってしまうかわからない。
不安を感じ取ったかのように、レオーネがまた胸の頂を指で摘まんだものだから、リゼロンはまた仰け反ることしかできなかった
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