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第18話
力無く逃れようとする身体を抑え込んで、何度も口付けた。舌を絡め、先日見つけた口内の性感帯を思い出させるように舌先で撫でる。その度リゼロンはくぐもった声で何かを伝えようとしたけれど、レオーネは構わずキスを繰り返す。
そうしてやりながら、服の上から身体に手のひらを、指這わせる。そんな些細な刺激でさえリゼロンはビクリと震えた。繊細な絹織りのような薄手のローブは肌触りも良くて、レオーネはこの服が好きだった。正確に言えば、リゼロンにまつわる全てが好きだったのだ。
あの静かな森の空気、穏やかな時間を過ごす彼の家。庭に咲き誇る花々の柔らかな色彩。年代物なのに少しも古びた様子の無い家具の、しっとりと手に馴染むような優しさ。リゼロンに呼ばれる自分の名前。彼の細くて柔らかな手。人形のように美しい微笑み。蒼の瞳に宿る慈愛の温もり。彼に抱き着いた時に触れる金の滑らかな髪、微かな花の香り……。
全てが、レオーネにとって大切な思い出であり、同時に苦い記憶だ。けれど今、レオーネはリゼロンに口付け、思うように触れ、蹂躙しながらその感覚が曖昧になっていくのを感じている。
ただ憎いだけで、こんな風に舌を絡ませるだろうか。彼の痴態を蔑むのではなく、抱いたりするだろうか。リゼロンのあまりに苦しげな声に、責めの手を緩めたりするだろうか――。
答えなど、とうに見えてはいる。それでも、気付きたくないし認めたくない。今でさえ、過ちを犯し続けているのだから。今更もう、遅いのだ。
「んう、ぅ、……っ、ふ、あ、……っ、れおーね、っ、ぁ!」
口を離すと、リゼロンが舌ったらずに名を呼ぶ。薬の効果はよく出ている。既に蕩けた瞳が、レオーネを見つめて揺れている。とはいえ、まだまだ理性は有りそうだ。
快感に溺れさせるほどに強く効くというその薬は、リゼロンと同じエルフ達が作ったという。皮肉な話だ。自分達を苦しめるものを、人の為にわざわざ作るのだから。エルフという生き物はどこまでも不可解で、どこまでも悲しい。そんな彼らを、祖父は……ダヴィードは愛したのかもしれない。この別荘に、妾として住まわせながら……。
そう考えると胸の奥が痛む。その理由も知りたくなくて、レオーネは責めを続けた。舌先で耳をつつき、首筋を辿る。白い肌を強く吸い上げれば、赤い痕が残った。それも明日の朝にはもう消えているだろう。独占欲を決して満たせない体は常に清らかで美しい。ならばそれを汚そうと思ってしまうことに、何の不自然が有るだろうか。
指では服の上から胸をなぞる。わかっていて、敏感な場所を掠めるようにしているとそれだけで期待してしまうのだろうか、ややしてぷくりと胸の頂が繊細な布の上からでもわかるほどに存在を露にする。エルフ達は不老不死。肉体の変化は残らない。それでも、記憶は宿る。一度快楽を教え込まれた身体は、思い出してしまうのだ。
「……ここ、気に入ったんだな」
「んんっ、ん、そ、そのような、こと……っ」
かり、と指の先端でひっかくようにすれば、リゼロンがびくりと跳ねる。何度か繰り返すとそこはレオーネに応えて弾力を持ち、更に弄ぶことを容易にさせる。小さく笑って布越しに指で挟み、くにくにと擦ってやると、リゼロンが顔を逸らせて震えた。
自由な脚が閉じようとするのを間に入って防ぎ、太腿を押し当ててやる。ぐいぐいと擦り付けると、次第に確かな存在が感じられた。
「く、……ぅ、レオーネ、……ッ」
「ここ、気持ちいいのか?」
「……っ、ァ、き、きもちい……っ、あ⁉ い、嫌だ、このような、い、言いたくない……っ」
胸をいじられながらの質問に、素直に答えてしまってから、リゼロンは頬を赤く染めた。身を捩り、口を塞ぐように手で覆う。レオーネはそれを許した。そのほうが服を脱がせやすいからだ。
脚の間への刺激は止めないまま、服を脱がせる。止めようと手を伸ばす度に、性感帯を弄べばまた彼は口と顔を手で覆ったから、それほど苦労はしなかった。
白い身体は先日までのことなどまるで無かったかのように清らかで美しい。しかし、確かに快楽の熱に侵されてしっとりと汗ばみ、赤みを増している。まだ口よりも身体のほうが素直だ。もっともっと、快感を与えて溺れさせなければ。
「……っ、あ、レオーネ、――っ!」
纏う物を奪われた胸に直に触れる。慎ましやかだったはずのそれはつんと勃ち上がり、更なる刺激を待ち侘びているようだ。レオーネはおもむろにそれを口に含む。
「や、あっ、……っ、んん、ぅ……っ!」
必死に口を塞いで震えるリゼロンの反応からして、気持ちいいのだろう。舌先で転がしてやりながら、もう片方も指で同じようにしてやると、リゼロンの脚が閉じようと震える。吸い上げ、先端を指先でつつき、押し潰す度に腰が跳ねた。
先日のように執拗にそこを苛めてもいいけれど、今日の本題はそこではない。レオーネはややして胸から離れ、ゆるゆると舌で肋骨から腹を撫で、さらにその下へと進んでいく。
「ひっ、あ、ならぬ、レオーネ、そ、そんな、」
何をしようとしているか、リゼロンも気付いたらしい。伸ばしてきた手を片手で掴んで、そのままゆるりと下腹部へ口付ける。そこにはリゼロンの既に熱を持ってしまった性器の姿が有る。
躊躇しなかったわけではない。一瞬、レオーネは動きを止めた。リゼロンが「ならぬ、そのようなこと、」と震えた声で訴えるのが聞こえ、それを受けてレオーネは。
「〜〜っ、レオーネ、ェ……っ!」
ちろり、とリゼロンの性器の先端を舌で撫でた。それだけで彼の身体がびくびくと震え、頭上からは懇願にも似た甘い声が響く。制止する声とは裏腹に、刺激を受けてそこはますます熱を持って悦ぶ。難儀なものだな、と他人事のように思いながら、レオーネはぱくりとソレを咥え込んだ。
「……っア! ん、んぅうう、う……!」
嬌声を抑えようとリゼロンがまた口を塞ぐ。抵抗が無くなったのをいいことに、深くまで咥え込み、根元を手で撫でてやった。リゼロンの脚がもがくようにシーツを蹴り、彼の意思に反してレオーネの脚に絡み付く。続きをねだっているような、拒んでいるような。快感に翻弄される姿は憐れで、しかし扇情的だ。
「ふ、……ぅ、ひうう、ん、んぅうう……っ!」
舌を這わせ、先端を吸い上げると悲鳴が漏れる。今「気持ちいいか」と問えば、恐らく答えるだろう。それを拒んで必死に口を押さえる、その無駄な努力が愛らしい気さえした。そうすると、今していることにも抵抗を感じなくなる。
もっと、溺れさせなければ。それは目的のためでもあったし、それだけでもなくなっていた。そろりと空いた手で荷物を探り、中から瓶を取り出す。何度も使ってきた液体だ。慣れた手つきで指に絡めると、静かにリゼロンの脚の間、奥まった場所へと滑らせていく。
「んんっ、や、やめ、あ、ア……ッ」
入口を撫で、つぷつぷと浅く指を出入りさせてからひと思いに奥まで侵入する。薬の効果かそこは既に熱く、指一本を受け入れただけで蠢き、きゅうと絡みついてくる。リゼロン自身もひくひくと小さく震えていて、これだけでも快感を拾っているのだとはっきりわかった。
舌先で口内の先端を撫でてやりながら、内部に入り込んだ指をくいくいと動かす。その度、リゼロンはくぐもった悲鳴を上げた。口を押さえているのだろうが、かえってそれが加虐者を煽ることには気付いていないようだ。
三度目ともなれば、リゼロンがどうされると反応するのかもわかってくる。弱い場所を探して指でとんとんと叩くようにすれば、抑えきれない嬌声と共に、口に咥えた性器から体液が溢れ出る。舐めとるように撫で、吸い上げながら同じ場所を指で押さえ続けると、リゼロンの手がレオーネの髪に絡みついてきた。
「だめ、……っ、は、離して、くれ……っ頼む……っ」
涙さえ浮かべている顔はすっかり紅潮して、彼が何を言わんとしているかなど説明されなくてもわかった。だからレオーネは無視して性器を深く咥え込み、奥に入れた指を増やした。
「ひっ、あ、あぅう、だめ、ぁ、もう、ゆるし、……っ、あ、レオーネ、たのむ、たのむからぁ……っ!」
懇願するリゼロンの細い腰や脚が震えている。近いのだろう。促すように吸い上げ、指を折るようにしてナカを責めた。
「ひあ、あっ、だめ、出、……る、離し、……っ、ひっ、い……ッ!」
リゼロンの身体が一際強く跳ねて、レオーネの口内にどぷりと体液が注がれた。流石に受け入れるのには苦労したけれど、人間のそれとは違うのか味も香りも殆ど無くて助かった。きゅうきゅう締め付ける内部の指を動かし続け、性器を吸い続けると、リゼロンが泣き出しそうな声で何事か訴え、震えた。
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