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春になって、晴れて入学式の日。 最高の気分だった。これから死ぬほど絵のことを勉強できる! 泉さんのことは、全然忘れられない。だけど会えるわけない、そう思った。 そう思ってないと辛かった。 大学生活にもやっと慣れて、5月の連休前のことだった。友達もできて、一緒にお昼食べようって食堂に来ていた。先に買い終えて、取ってた席に行こうとした時だ、 「あー!透だー!」 声の方を見た。 「へへ、久しぶり。あー、覚えてないか。2年前くらいかな?舞踊科のとこで会ったの。泉だよ。泉充」 忘れてないわけない。 どれだけ会いたいと思ってたか、 「合格したんだね!おめでとう!」 「あ……ありがとうございます、」 「げ、引いてるよね、急にごめんね。見かけたから思わず声かけちゃった。じゃあ、また」 「待って!」 大きな声を出してしまった、 「んー?」 「あの、ずっと、泉さんに会いたいって思ってました」 「うそー!嬉しいけどさすがに嘘でしょー?」 「去年の文化祭、観ました、踊ってるところ」 「え!ほんと?」 「はい。すごくきれいで、」 泉さんはきょとんとしてる。 きれいとか嬉しくないし、むしろ気持ち悪いかも、僕みたいなのに言われて、 「あ、ごめんなさい、」 「何がごめんなさい?嬉しいよー、観てくれて!へへ、また学内でも公演するし、観に来てくれたら嬉しい。ねえ、連絡先教えてよ!」 連絡先を交換したら、泉さんは手を振って行ってしまった。 行った先にはきれいな女の人が座ってて、やっぱりそうだよな、って気持ちと同時に苦いような気分にもなった。 泉さんの連絡先を知っても、連絡なんてできる訳ない。小心者すぎる自分がしんどい…

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