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11月になって、学祭前の最後の試着と、当時の動きを練習するっていうので、服飾科に向かった。
トルソーがたくさんあって、広いはずの部屋が狭く感じる。
着替えて、今日は靴も用意されたのを履いた。
「こ、これ、歩けんけど?」
遙は踵が高いブーツだった。背伸びするみたいなほどの高いヒールではないにしても、普段スニーカーばっかり履いてる身としては大変だよな…
僕のは先が尖った革靴だった。全然履き慣れないから絶対靴擦れすると思う。当日は絆創膏持って行っとこう…
「大丈夫大丈夫!ちょっとうろうろしてたら慣れると思う」
怜さんは軽くそう言った。
遙と僕が油画科ってこと忘れてんのかな…
充さんもブーツを履いてる。似合うなあほんと…
長い脚が更に長く見える。
端にある鏡を見ながら、ちょっと動いてみたりしてて、そういうのもものすごい様になってる。
「ロボットみたいになるけど?どうしたらいいの?」
「はるちゃん、手貸して」
シノが遙の手を取って、歩く練習を始めた。
何回も作業台の間を行き来してる。
僕も言われるがままに歩いて、どうすべきなのかをなんとなく覚えた。
あとは充さんが歩くのにただただ見惚れてた。
遙とシノから「口ぽかーんってなってる!」って笑われた。
練習と服の細かな調整が終わって、みんな順番に着替えていく。
不意に怜さんとふたりきりになった。
「透さ、いずみとうまくいってる?」
怜さんは髪をかき上げた。
耳元でピアスがゆれた。
「いずみ、最近不調でしょ?」
「え、」
「いっぱい優しくしてあげてよ」
「なんで不調って、」
「ん?見た感じでなんとなく。まあ付き合い長いからかもね」
「怜さんと充さんって…」
「幼馴染なんだ。なんかずっと一緒の学校行ってんの。別に「一緒のとこ行こうね〜」とかそんなん全然ないんだけど、いっつも「え、お前もここなの!?」みたいな感じ。腐れ縁かな」
「そうだったんだ…」
「いずみさあ、恋愛はいつも長続きしないんだよね、なんでか分かんないけど」
「え!」
「自分から切っちゃうの。ほんと不思議なんだけどね。困らないからなのかね、いずみは人を惹きつけるから。…あ!!いや、大丈夫と思うよっ」
………大丈夫なわけないじゃん!!!
笑ってごまかしてるだろ、怜さん!!
「大丈夫大丈夫!」
肩をバシバシ叩かれた。それからひらひらこっちに手を振ったら、服を抱えて行ってしまった。
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