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泣くだろ普通に。
そんなイメージないとか言われても泣く。
「気にしなくていいって!透はなんも悪くないじゃん。いずみっていつもそんな感じなんだよ」
怜さんは、大学の近所にある中華料理屋に僕らを連れてってくれた。店の存在は知ってたけど、なんとなく入ったことなかった店。
餃子を箸でつまんで口に持ってって、もぐもぐしながらそんなこと言う…
「なんなん?そんな感じって」
遙は麺を注文したからか、前髪を結んで顔が全開になってる。隣にはシノが座ってて、ふたりは肩が触れ合ってる。食べにくくないわけ?
「誰かと付き合っても、さらーっと別れんの。長続きしない。理由はいちいち聞かないし分かんないけど、飽き性なのかね」
「飽きられたんですか僕」
「さあ?分かんないけど…か、相性合わなかった?体の」
シノが咽せた。遙は背中をさすってあげてる。
「そんなんあるん!?」
「そりゃ生理的にむり!とかあんじゃん」
「え、とおるちゃんなにしたの…いくら好きだからって、なにしてもええわけじゃないじゃん…」
「してないって!」
「普通にしかしてないってこと?っていうか普通が分からんけど、俺には」
「え、はるちゃんって、ど」
シノは机の上に置いていた怜さんの手の上にグーを振り下ろした。痛みで悶絶してる…
「し、シノっ」
「はるちゃんにそういう事は言わないで下さい」
「怖い」
「なあ、とおるちゃんは普通にしかしてないってことなの?」
遙は僕の顔を見て、もう一度同じことを聞いた。
「普通にもしてない。なんにもしてない」
「原因それじゃん」
「え!」
「欲求不満だったんじゃない?今電話して聞く?」
「いやいやいやなんて聞くわけ!?」
「え?いずみ、お前したかったんだよな?って聞くけど?」
「最悪じゃん」
「そう?」
「シノ、よぉ怜さんと組んで色々作業できたな…」
「慣れだよ」
「慣れ!!やめてよなんか俺がへんてこりんな奴みたいな扱い!!」
「へんてこりんでしょ、怜さん」
「俺すげえまじめだし!!」
「まじめなへんてこりんだし、僕はそこが好きで尊敬してます」
「シノ〜〜〜」
「待って、怜さん褒められてないんちゃう?」
「うそ!やだよ褒められたいよ俺、はるちゃん撫でてよ」
「あほなん?」
3人の話聞いてたら、どうでも良い気分になって心地良かった。だけど、ふと会話が途切れたらやっぱりだめだ
僕が「したいんだ!!」って態度でいればよかったのか?……そりゃあ、したくないの?って言われたら、めちゃくちゃしたいです、って言えるくらいの感じはあった。煩悩にまみれてたと思う…だけど、それを充さんにぶつけるのは絶対に嫌だった。いつかその時がきたら、衝動!みたいなのじゃなく余裕を持って、触れてみたいと思ってた…だから今は、修行みたいな時間だ、とか思ってて、充さんと一緒に過ごせるだけで十分なんだ、って……
苦しい
なにかメッセージ送るか、それとも、これで身を引く方が充さんにとってはいいのか、
「送っといたよ、いずみに」
「……へ?」
「お前は欲求不満で透と別れたの?って」
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