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ずっともやもやが晴れなかった。 今までもあったけど、これまでで1番かも。 充さんに会ったら、なんて言えばいいんだろう?…いや、別に何も言う必要ないか、見かけたことを充さんは知らないわけだし。 今日の公演だって、別に僕が観に行ったかどうかなんて分からないと思う。かなりのお客さんがいるし……客席にいようがいまいが、充さんにはなんの関係もないだろう。 そう思ったら、なんかすっきりしてきた気がする。 5時前に大学に着いて、遙に連絡した。 「あ、遙?」 『……とおるちゃん、先に言うとくわ。みちる、ちょっと怒ってるかもしれん』 「え?」 『公演終わって出たところでさあ、今日はみちると話せて…っていうか、みちるがわざわざ俺らのとこにバーっと来てさ。透は?って』 「…まじか」 『俺とシノがさあ、あー、とか、えー、とか言ってる間に、怜さんが「寝坊だってさー」って言ってしまったわけ…別に、あの野郎!みたいなこと言ってたわけじゃないんだけど、なんていうか、表情がな…んー……とりあえず会おか!カフェテリア向かうわ』 すぐそこにあった4人掛けの席に座って、遙たちが来るのを待った。 小1時間くらい経ったけどなかなか来ない。何してるんだろうな… 「透」 顔を上げる速さが過去最高だった気がする。 さっきまで踊ってたんじゃないの?なんでここにいるんだろう?……いろいろ聞きたいけど、なにも言えない、 充さんは、黒いスキニーにゆったりした淡いみどりのニットを着ていて…舞台に出てる時の感じはもうなくて、いつも通りの雰囲気だった。 いつも通り、美しかった。 「ここいい?」 イスを引いて、充さんは隣に座った。 「昨日会ってんのに、なんか久しぶりって思っちゃった」 顔を横に向けられない、目線だけ、 きょろきょろ動いてしまう、落ち着かない… 何を言おう、どうしよう、 「別れよっか」 怜さんが言ってた通りになった、 「なんか、分からなくなっちゃった」 どういう意味なんだろう、分からなくなるって なにが?どういうこと? 「………ごめん、行くね」 本当に行ってしまった。 僕はまだ返事してない。 こういう場合って、どうなるんだろう?別れたい、って意見が優先されるのか?僕が絶対に別れたくないって言ったって、別れたいって言ってるんだから別れなきゃでしょ、ってなるの? ……なるのか。 僕はこれで、充さんと終わったことになるのか 「はあー」 声出てびっくりした。 泣きそうだった。待って、なんでふられた?分からないんだけど全然!別れたくないって!おかしいよ、ずっと好きでやっと付き合って貰えたのに、僕どこが悪かったんだろう?今からでもそのだめな部分を修正するからなかったことにしてほしい、充さんのいいようになるから 「おーい!とおるちゃーん……えええ!!!泣いてるじゃん、え!どうした!!」 遙にそう言われるまで、涙が出てることにすら気がついてなかった。

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