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『もしもし?とおるちゃん?』 着信で目が覚めた。遙だ 「ん、うん、どうした?」 『なんや、寝ぼけてる?』 「ねてた」 『ええー!もう昼過ぎてるぞ!みちるの公演、もうちょいで始まるのに!』 「…遙、観るの?」 『うん。シノと怜さんも観るって。今一緒にいるよ』 「そうなんだ、」 間に合う気もしたし、間に合わない気もした。 とにかく、行く気分じゃないことは確かだった。 「ごめん、行けない」 『…そうかあ、分かった。学校にも来ない?怜さんが奢ってくれるって!なんでも奢るて言ってる』 なんでもとは言ってねえだろ!って遠くで声がした。 「何時頃?」 『公演終わってふらふらして、5時過ぎくらい』 「行く」 『分かった。お腹空かせておいでよ!』 「かなり空かせとく」 『へへ、また後でね』 「うん、連絡ありがとう」 充さんは、昨日結局どうしたんだろう。 疑ってる。 疑ってもなお、嫌いになんてなれない。 僕にとって特別なんだ、充さんは のろのろベッドから出て、外に行く支度をした。

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