1 / 229

第0話

プロローグ 「っんぁ、あっ、はぁ・・せ、んぱ・・・九流先輩っ・・・」 軋むベッドの上で、人の心を惑わせる魅惑的な漆黒の瞳を持つ西條 ざくろは、人生初めての熱情に涙を浮かべて、恋い焦がれる男に抱きついた。 心臓が痛くて、苦しくて、辛いのに、体は気持ちよくて、頭の中は電気が流れてるかのように痺れる。 切羽詰まった声で、何度も自分の体を貪ってくる男の名を繰り返し呼ぶと、その気持ちと連動するように心が痛んだ。 まさか、自分がこんな風になるなんて 自分の生涯で起こりうるなんて思わなかった・・・ 恋に落ちるだなんて、思いもしなかった・・・ 「すき・・・、先輩が好き・・・」 熱を孕んだ瞳を見上げて告白すると、嬉しそうに微笑んで口付けられる。 「俺も・・・」 自分の気持ちに応える相手の言葉に涙が溢れた。 この人の迷惑にはなりたくない 自分へ向けてくれた好意を後悔されたくない この人と、こうしている時間が自分にとって奇跡だと自覚している それ以上を求められない 求めてはいけない・・・ 自分の汚れた体と穢れた経歴 俺の地獄の人生とこの人の輝く未来はきっと交差しない 交差させてはいけない だから、今だけ・・・ 今だけ、側にいさせてください あなたが俺を捨てる時、決して涙は見せないと誓うから・・・・・

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!