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第0話
プロローグ
「っんぁ、あっ、はぁ・・せ、んぱ・・・九流先輩っ・・・」
軋むベッドの上で、人の心を惑わせる魅惑的な漆黒の瞳を持つ西條 ざくろは、人生初めての熱情に涙を浮かべて、恋い焦がれる男に抱きついた。
心臓が痛くて、苦しくて、辛いのに、体は気持ちよくて、頭の中は電気が流れてるかのように痺れる。
切羽詰まった声で、何度も自分の体を貪ってくる男の名を繰り返し呼ぶと、その気持ちと連動するように心が痛んだ。
まさか、自分がこんな風になるなんて
自分の生涯で起こりうるなんて思わなかった・・・
恋に落ちるだなんて、思いもしなかった・・・
「すき・・・、先輩が好き・・・」
熱を孕んだ瞳を見上げて告白すると、嬉しそうに微笑んで口付けられる。
「俺も・・・」
自分の気持ちに応える相手の言葉に涙が溢れた。
この人の迷惑にはなりたくない
自分へ向けてくれた好意を後悔されたくない
この人と、こうしている時間が自分にとって奇跡だと自覚している
それ以上を求められない
求めてはいけない・・・
自分の汚れた体と穢れた経歴
俺の地獄の人生とこの人の輝く未来はきっと交差しない
交差させてはいけない
だから、今だけ・・・
今だけ、側にいさせてください
あなたが俺を捨てる時、決して涙は見せないと誓うから・・・・・
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