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第1話
日本の名家の子息が集う全寮制男子校の立春高校は、授業料、制服、行事毎に必要となる費用はとてつもなく多額なことから一般人では到底通うことのできない学校だった。
だがこの春、学校を設立して以来、初めての一般人が入学してきた。
彼の名前は西條 ざくろ。
艶やかな黒髪と漆黒の瞳。白い肌にピンクの唇。妖艶な雰囲気に長く細いしなやかな四肢はすれ違う全ての人の目を惹き付ける。
彼が微笑むと人は頬を赤く染め、彼が目を合わせれば何かに取り憑かれたように、かしずいてしまう不思議な魅力を持っていた。
しかし、その魅惑的な容姿とはうらはらに、ざくろは生まれたときから貧しい生活を強いられていた。
両親は若くしてざくろと妹を産んだが、育児を放棄して毎日遊び呆ける最低な親だった。そんな親元で育った二人はその日、食べる物にすら困る生活を強いられていた。
幼稚園、小学校のときは1日の食事を給食でまかない、朝、夕とゴミ箱を漁っては妹の食べ物を探し歩いた。
中学に上がると新聞配達の仕事を始めるものの、一生懸命働いた給料は強欲な親に見つかって取り上げられてしまい、二人の生活は何一つ変わることはなかった。
ざくろの生活が劇的に変わったのは、中学3年の夏休み。
蝉の声がうるさい公園のベンチに座って、暑さと空腹さにとうとうここまでかと、高い空を見上げていた時、目の前に一人の男が立ち止まった。
炎天下にも関わらず、涼しい顔で一流品のスーツを着た男は優しげで品がよく、見るからに金持ちそうだった。
「一緒に遊んでくれないか?」
唇で弧を描き、優雅に笑う男に誘われるままざくろはベンチを立っていた。
豪華な食事に着心地の良い衣服をプレゼントされ、気がつけば身なりを整えられていたざくろは煌びやかな高級ホテルの一室へと連れ込まれていた。
初めて入ったホテルに興奮していると、可愛いと微笑みながら男は距離を縮めてきた。
一気に醸し出す空気が妖しものに変わった男に、恐怖を感じて帰ろうとしたとき、大きくて上質なベッドの上へ突き飛ばされた。
困惑しながら体を硬直させていると、男はゆったりと微笑みながら、まだ性に無知なざくろの初めての性体験を奪った。
強烈な痛みに気を失ったが目を覚ました時、その男は既にいなくて、代わりに10万円というお金が机の上に置かれていた。
10万円
それが、「俺の値段」
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