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第2話

喪失感の中、10万という大金を手に持ったとき、自分の体が商品になると初めて知って喜びが胸の内を占めた。 女ではない為、妊娠もしない。 一度抱かれたらもう二度も三度も同じだとタガが外れたざくろは、その日から毎日体を売った。 一回10万 この金額を自分の価値と信じて貫くことにした。 値下げ交渉してくる客もいれば、安いと言って気前よくお金を払ってくる客もいて、問題なのは、自分を買えるほどのお金を持っている人間は実際、一日に一人出会えるかどうかという点だった。 だが、一週間に一人は必ず現れる客によって、ざくろの暮らしは確実に豊かになっていった。 妹に服を買ってやり、食べ物をちゃんと食べさせてやれた。 体を売る事に躊躇いなんてなくなっていく。 躊躇ってなんていたら、死んでしまうから。 この世はとても理不尽で、何も平等ではない。 誰も助けてくれない現実を悟り、生きてきたざくろはお金に取り憑かれたように仕事に明け暮れた。 もうすぐ中学に上がる妹の為、制服に鞄、教科書と必要な物がどんどん増えていく。 更に高校へ行くには義務教育ではないことから、学費も必要なのだ。 生きていくには綺麗事だけでは済まない。 実際、お金は必要で今後、妹の事も考えるともっと稼げる場所がないかと悩むほどだ。 そんな時、いつも良くしてくれる客に紹介された稼ぎ場所がこの立春高校だった。

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