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第3話
名家の子息が顔を揃えて入学することで有名なその学校は大都会のど真ん中に立地されていた。
立春高校は少し特殊な学園だった。
外出をする為には大量の申請書を提出させられたり、男女交際を禁止されたり、帰省するのも正月と盆の一週間だけと決められている。
外の世界から少しでも切り離すような考え方の学園は、生徒たちにとって牢獄のようでもあった。
そんな自由に飢えた学校へざくろのような魅力的な子が入れば間違いなく、アイドルになるだろう。
「ざくろ、君さえ嫌でないのならバカ子息達から金を巻き上げたらどうだい?」
俺をそそのかす客は優美に微笑んで付け足した。
入学金、月々の学費、制服などの備品も目が飛び出しそうな金額だったが、それら全てを支払うと言い出したのだ。
三年間で必要な教材、学校での行事毎に掛かる全てのものを揃えてくれると言った。
いわゆる足長おじさんだ
ただの客がどうしてこんなに良くしてくれるのか分からないものの、本音を言うならざくろ自身この有難い申し出を受けたかった。
しかし、三つ離れた妹が気掛かりで、すぐに首を縦に振ることが出来ずにいた。
瞳を閉じて冷静に妹のことを考える。
妹にはちゃんと不自由なく中学、高校と進学させてやりたい。
あわよくば、大学は無理でも短大には行かせてあげたい思いがあった。
社会に送り出し、良い人と出会って結婚もしてほしい。
自分のように汚れたりせず、あんな両親のようにならぬよう幸せになってほしい。
切にそう願ったとき、やはりお金が必要な事を思い知った。
改めてそれを痛感すると、ざくろはその客へ頭を下げていた。
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