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第90話

「全くもって理解できねー。なんでそんなに俺が好きなのに駄目なんだ?」 「付き合うと俺を捨てる時、先輩が苦労するからです」 「・・・は?」 言われた意味が理解出来ない上に失礼な言葉を言われた気がしてイラっとなり、舌打ちするとざくろはムキになったように言い募った。 「前も言いましたが、今はこんな閉ざされた場所にいるから先輩おかしくなってるんですよ!卒業したら絶対普通に戻ります。その時、絶対俺が邪魔になるでしょう?そしたら別れたくなって・・・、でも俺はそんな時、上手に離れれるか分かりません。馬鹿みたいに縋ってだだ捏ねて絶対困らせる。だから・・・」 拳を握りしめてざくろは消え入りそうな声で呟いた。 「だから・・・、最初からそんな関係やめてほしい」 どこまでもネガティヴで消極的なざくろに九流は眉間に皺を寄せた。 「お前の不安はそれだけか?」 「え?」 「俺が卒業と一緒にお前を切り捨てるかもって事が嫌で俺と付き合えないってことなのか?」 「いいえ!まだあります!」 九流の言葉にざくろは声を大にする。 「俺にお金使うのやめてください!こんな高い家具、俺には不相応です!服だって、あんな良いの困ります」 「あー、わかった。わかった。金掛けられる事に慣れてないだけだな。その辺は徐々に俺が慣れさせてやる。問題はお前のそのネガティヴな思い込みだ!」 九流はざくろの頬を両手で包んで自分に引き寄せると黒い瞳を細めて睨みつけた。 その目があまりにも怖くて息を呑み硬直する。 「お前、俺の事みくびんなよ?今まで外にいた時から女には一度だって不自由したことなんてねーよ。ここへ入学して一年の時だってそうだ。俺が呼べば女は来る。たとえこんな場所でもだ」 ざくろの瞳を見つめて言い聞かせるように続けた。 「ざくろ、俺は色んな奴を見てきた。おざなりだが付き合った事もある。体だけのセフレを作ってた時もある。お前のように金で体を買った奴もいる。だけど・・・、心を奪われたのはお前が初めてだ。大事にしたい・・・。俺のモンにしたいって初めて思った。後悔させないから俺のモンになれよ」 九流の告白に瞬きも忘れて真摯に向けらる瞳に釘付けになる。 その瞳に自分の泣きそうな情けない顔が映って、ざくろは固く目を瞑った。

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