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総失
った。
僕は教えられた山裾の方へ足を向けた。
走るように森の中を進み、のどの渇きに喘ぎながら煙に咳き込んだ。森を焼く炎は乾燥した空気をまとってさらに勢いを増している。振り返るほどの余裕もない。
時折響く地響きのような怒号が戦地が近いことを教えてくれる。まだ、敵兵も味方の兵も見当たらない。
アウルムからブルーメンブラッドまで2日かかった。味方の兵士が攻め入るスオーロの兵と途中でぶつかっていれば、戦地はさらに近いはずだ。
追いかける相手は馬に乗っている。いくら走っても追いつくことはできないかもしれない。
だけど、諦めるわけにはいかない。
背の高い草をかき分けて、獣道に出た時だった。
足元に柔らかい感覚がして、慌てて引き下がったが、驚きに足がもつれて、今出て来たばかりの草の中に倒れこんだ。そして、踵を返すと草の根元で息をひそめた。
少し離れたところから声が聞こえた。
獣道だと思ったそこは、山裾から燃え広がった炎によって焼かれた森だった。
柔らかいと感じたそれは、敵兵か味方か……。
倒れた兵士の死体だった。
「ここを通り抜けたようだ」
「挟み撃ちだ」
「仲間を集めろ、後ろから追いかけろ」
馬の足音もする。そっと草の間から覗き見ると、ブルーメンブラッドの甲冑とは違う兵士たちが数人集まっていた。馬に乗った兵士も数人いる。
スオーロの兵士だ。
通り抜けて行ったのはシャルール達だろう。
ここまでは無事に来られたようだ。
だけど、ここから先にはスオーロの兵が待ち構えていて、今ここにいる兵が後ろから追いかけて挟み撃ちにするのだろうことが分かった。
幾人もいる兵士に僕一人が立ち向かったところで、勝ち目はない。
見つかって無駄死にするわけにはいかない。
もう少し、もう少しでシャルールに追いつくことができる。
「向こうにはオオシ様がいる。勝機はこちらだ」
「そろそろ行くぞ」
兵士たちは手に持った槍や剣を高く掲げると走るようにして獣道を進んでいった。
追いかけなくては。
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