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第7話 甘い夢

「駅に行くんですよね 良かったら傘……一緒に……」 後から声をかけてきた君 突然の出来事だった 何故君? 上擦る声が震える 「あっ…あ ありが…とう 駅まで…」 「離れていると傘の意味ないから もっと寄って下さい」 肩が触れる 言葉をくれるたび 君の息が俺の唇を震わす 「あの…何故駅までって……」 消え入りそうな俺の声 同じ時間 同じ車両 君は音楽を聞いてる 君は本を読んでいる 見ない振りしても 胸が高鳴るんだ ああ~今日も逢えた ああ~今日も逢えた 「いつも逢ってるんですよ」 「えっ!」 「僕は毎日楽しみに為ているんです でも……君は寝てばかりだから」 耳まで赤くなるのが判る 思わず下を向いてしまった 「これで明日から声かけられる 嬉しいです!」 その無邪気な笑顔をみせないで 「ほん…本当は知ってた 見ていた……君の事」 「嘘っ どうしよう…… 嬉しいです」 「あ……あのずっと好き」 唇は重なっていた   夢なの? 夢じゃないの? あれから十年 無邪気な笑顔 優しい吐息 君は今も俺に唇を重ねてくれる 夢は未だ醒めないんだね 今も俺たちは夢の中

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