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第13話 いいのか

寂しさと恋しさを引き摺り降り立つ駅 目に映るのはあの頃の風景 鼓膜に響く夏の昆虫 懐かしさが苦しい 皮膚をなぞる優しい風 躊躇いながら踏み出す爪先を見る 無条件で受け入れてくれる愛は とうの昔に消えてしまったのに まだ求めているのか あいつは… きっと踏み出している 今更どうにもならない 判っているんだ ああ~ 受け取れなかった 欲しかったのに  欲しくて欲しくて… 死ぬほど欲しかったのに 周りの視線に耐えられず 逃げた俺 夕焼けかぁ 五時を知らせる 夕焼け小焼け… ふっと口を突いて出た お手々繋いで皆帰ろ カラスと一緒に焼けましょう~ 夕焼けに向かって カラスが飛んで消えていく まるで焼けて消えたみたい なんっていったら あいつは焼けるてなんだよ あははカラス丸焼けだ~ あの頃はゲラゲラ笑って 毎日大声でわざと歌っていたっけ ふふふふあはは 俺はまだ丸焼けにはなってねぇし ぶっ倒れた心 ヨロヨロしながら 立ち上がれ さあ帰ろ帰ろ やり直しはきく きっと……仕事上手く行く 彼奴への 恋情はここで 燃やせばいいさ でけぇ独り言ほざいているのは お前か…… あはは それじゃあ俺もお前も カラスも丸焼けだろうが 懐かしいその声 何故? お前?いるんだよ 相変わらず馬鹿な野郎だな こっち向けよ 嫌だ…… 随分前に近いうちに 一度帰るってラインよこしたろ? 随分前って 二年以上前だぞ それに 既読スルーされたしな 既読スルーって 既読がつけば 読んだ事になるだろうが それから毎日来てたよ この時間しかないから 楽だけどよ! いいからこっち向けよ 顔見せて…… 無理だ向けるわけない うんなら好きにしろ 帰るなら帰ればいいさ でもなっ 俺の隣は今も変わらず空いてる あの丸焼け馬鹿野郎が 痛みを置きに来る と信じているから 手を置かれた肩から伝わる あいつの心の震えが伝わる 焦がれる想いが涙になり頰伝う 畜生! 「もう どこへも行くな」 「うん…」 「腹減ったなっ」 「腹減ったよ」

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