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第1話

 五月十六日、満月――  えむと寧々の女子たちを先に帰らせた後ステージの片付けをしていた時に唐突に類が口を開いた。 「司くん、月が綺麗だね」  類の言葉につられ仰ぎ見れば漆黒に落ちた空に浮かぶ満月。 「ん? おお、本当だな! 今宵は満月か」  その神々しき輝きに司も思わず歓喜の声を上げる。この日の満月は何故か普段よりも大きく見えた。えむや寧々も今頃同じ月を見ているだろうか。 「司くんってば、本当に……」 「どうした? 類」  呟いた類の言葉が司の耳に届く。類がどのような顔で気持ちで、それを口にしたのかは司には分からない。  ただどこか悲哀じみたものを孕んだその声色が司の心に妙に引っ掛かった。

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