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00.プロローグ
「うわー、きついな」
バケツをひっくり返したかのような雨に窓ガラスをひっきりなしにガタガタと鳴らす強風。
今朝のニュースでは夕方から小ぶりの台風になるでしょうと言っていたがこれどう考えても強い台風だろう。
昼間の内に買い物を済ませておいて本当よかった、ついでに古本屋で面白そうな分厚い本も手に入れられたしよかったよかった。
俺は小さい頃から本が好きで、面白そうだと思ったらどんな種類の本でも読んだ。
ファンタジー、歴史、美術、恋愛、BL、伝記、その他もろもろといった具合。
一番好きなのはファンタジーの分厚い本!!
そんな本ばっかり読んでいて小学校の図書館の先生につけられたあだ名が「ファンタジーのパワフル読書家」
そうかもしれないけど……つけられたときはなんだか微妙な気分になった
まあそれはさておき、今大切なのは手に入れた戦利品『カマラード』だ。
買ったのはその厚さと、表紙の蒼い毛並みに紅玉の瞳をした虎のイラストが気に入ったからだ。
だから、どういう内容の本かはわからない。イラストからして俺の好きなファンタジー系だと思うんだけど……ていうかそうあってくれ!
布団にくるまり、わくわくしながら最初の一ページをめくる。
『えー、この本を読もうとする君へお願いがある。
最初にいうけど……この本は途中までしか書かれてまっせーんテヘ☆
あっ、待って、待ってよ、閉じないで!お願いします!!
コホン……だから君にはこの本を完成させてほしいんだ。
ちなみにこの本、BLファンタジー本ね。
えっ、無茶言うなって?それがよっこいすっとこどっこい、僕の力を使えばできるんだな~これがドヤッ
わー、閉じようとするな!ていうか、頼むから閉じないで-!
ふざけてるんじゃなくて本気なんだ。
本気にはみえないって?むぅ~……仕方ない。
言葉で協力してもらえないなら、力を使って協力してもらうしかないよねニヤ』
いやもうそれは脅しだろ。
というか何この本?
途中までしか書かれてないなら本だすなよ、買った俺がバカみたいだろ。
まだ一ページしか読んでないけどもう読むの辞めよう。
こんなのに100円もだしたなんて……
怒りを通り越して呆れた俺は本を閉じ─
突然、本が眩い光りを発しだした。
うぉ、眩しい!てかっ目が痛い、体も熱いというか痛い!?
なんだ、何が起こってるんだ!?
やばい、だんだん意識が遠のいて……
うん……温かいし、もう眩しくない。
俺は本を読もうとして夢を見たのか。
そうだ、そうだよなあんな本があるはずないん
だから─パチリ
「起きたのね、おはよう私の可愛い坊や」
起きて早々、見知らぬ毛も耳のコスプレをした銀髪のイケメンにそう微笑まれた俺はとりあえずー
「おぎゃ───────!!(なんじゃこらー)」
叫んだ。
赤ん坊になってました、はい。
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