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sideフリオ 解けない問いかけ

「は?」 思わず間抜けな声が出る。 俺とチビが打ち合った瞬間、辺りを揺さぶるような鈍い音とともに互いの木の剣が折れた。 その剣先はそのまま弧を描き、地面に鋭く突き刺さった。 木の剣とは言え一撃で折れるって……どんだけ力があるんだ、このチビ まあ、俺が言えた義理じゃないけどな チビは動揺せずに、俺の出方をうかがっているようだ。 シエロは……確信犯だな。ニマニマして俺たちを見ている。 カクトとマルスはぽかんとだらしなく口を開けていて、とんでもなく間抜けに見える。 「どうだ、フリオ?」 シエロが気色悪い笑みを浮かべて尋ねてきた。 「……守護者の候補者としては及第点。 だが、婚約者の候補者としては10点。」 構えを解き、率直な意見をシエロに述べる。 「相変わらず厳しいのな、お前」 シエロはやれやれとこれ見よがしに肩をすくめてみせた。 「……一番厳しいのはお前だろうが。」 「ん?なんか言ったか、フリオ?」 うさんくさい爽やかな笑顔のシエロに「何でもない」と返す。 面倒な事は嫌いだからな。 「こ……ん……やく……しゃ??」 「婚約者の候補者だ、チビ」 ぴしりと固まったチビに釘を刺す。 舌打ちしたいのはやまやまだが、泣き出されると余計に面倒なので我慢する。 「おい、チビ」 ショックから抜け切れたのか、声をかけるとチビはきっと俺を睨んできた。 「少しだけだが、お前の実力を認めてやる。だから、俺を後悔させるな、以上。」 褒めてやれば、チビは目をまん丸くさせて固まった。と、思った次の瞬間にはすごい勢いで尻尾を振り始めた。 本人、無自覚なんだろうな、あれ。 にやけた顔ですごんでも、尻尾と相まって迫力ないどころかすげえアホにしか見えない。 「わかりやすいアホだな、チビ」 ため息をもらせば、今度は見るからにすねたチビに、なんなんだお前は、と言いたくなる。 勝負の時に見せた冷静さと余裕はどこいったんだ 「フリオ、ケガはないか?」 「ああ。で、判定は?」 やっと復活したマルスを半眼で睨む。 お前、自分が審判だということ忘れてるだろ 「あ″っ……えー、この勝負、引き分け!!」 その声を合図に俺はチビから離れた。 すぐさま、カクトがチビに駆け寄りあれこれと世話を焼き始める。 「……超ブラコン兄」 「あれ、もしかしてフリオ、二人が羨ましかったりする?」 「あ″?……ああ、悪い、お前の頭につまっているのはおがくずだったな、マルス。 あっ、そうそう、宮殿への報告とあれの説明よろしく」 「ついでに後片付けも頼むぞ」 「……あのフリオ、俺、お前の剣の師匠だよ? 後、兄貴、今日の俺、一応客だよな? 二人とも俺に対する扱い荒くない?というか、普通にひどくない?」 「さっ、みんな早く中に入れよ。せっかくのご馳走が冷めちまうぞ。」 「あれ?目から汗が……」 騒がしいマルスを剣の残骸とともに庭に残して、シエロの案内で家の中に入る。 問いたそうなチビの視線が後ろから突き刺さるが、全て無視する。 正直、チビが守護者となれるかどうかは、チビの努力次第だろう。 だが、チビが俺の婚約者となることは断じてないだろう。 理由は三つ。 第一に俺はショタじゃない。つまり、ひとまわりも年が違うチビは非恋愛対象。 第二に婚約者としての覚悟がないし、役目が務まるとも思わない。ただでさえ、チビには守護者としての重圧や義務がつきまとう。これに俺の婚約者としての重荷まで背負ったら、確実にチビは壊れるだろう。 第三に、チビの純粋でいてどこか壊れそうな、脆い硝子に似ている瞳が苦手だからだ。 チビの瞳は思い出したくない記憶の残滓をよみがえらせる。 『なぜお前が生きている!?』 無力さに打ち震える俺を映す、夜空色の脆い硝子に似ている瞳 不意に弾けた怨嗟の光景に、強く舌打ちする。 「どうした、フリオ?」 案じるような視線をよこすシエロに「何でもない」と返す。 俺があの瞳に深入りするとき───俺は俺でいられるのだろうか 廊下に置かれた振り子時計のカチコチという音がやけに大きく聞こえた。

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