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13. ギャップあり過ぎです

暗色の斑で縁取られた淡灰色の丸い耳と太く長い尾。 琥珀色の柔らかそうな髪に冷たそうな瑠璃色の瞳。 玄関の扉を開けた先にいたのは、絶世の雪豹獣人の美少年でした。 銀糸が織り込まれた空色の生地で作られたタキシードを優雅に着こなす美少年は天使のように綺麗だ。 「フリオ様!!なぜ貴方様がここに!?」 「見定めに来た、以上。」 美少年は素っ気なく言い放つと、頭を抱えた兄から固まっている俺へと、氷のような眼差しを移した。 「お前がアイトか?」 「ひゃい」 しまった……緊張のあまり思い切り噛んじまった 「そうか。バカ丸出しのひ弱そうなチビだな」 むっ。 この美少年、天使のような容姿とは裏腹に口が悪い。 「おいチビ、お前、候補者としての覚悟は出来ているのか?」 候補者?覚悟? 何のことだかさっぱりなんですけど 「……出来ていないのか。まっ、そうだよな。お前のようなチビは、家でミルクでも飲んでお人形遊びしてる方がお似合いだ。」 ああ……わかった。 美少年よ、ちょっとそこに正座しろ そして、俺と楽しい楽しい話し合いでもしようなニコッ 「えっ!?何これ、修羅場!? 俺の超絶に可愛い甥っ子を巡る修羅場なのこれ!?」 いつの間にか、パパさんと同じしなやかな茶色の髪にうぐいす色の瞳をした狼獣人の青年が美少年の背後に立っていた。 青年は黒に近い深い青の軍服をきっちりと着こなしていて、黙っていたら、厳格な軍人だと思い込んでいただろう。 「はっ。陰から一部始終を見ていてくせに。 相変わらず、子どもの前では調子がいいな、マルス。」 「いやいやいや、フリオのせいだから!! あんたがいきなり喧嘩を売り始めるもんだから、登場するタイミングを逃したんだよ!! 見ろ!!あんたのせいで俺の天使たちが、スゲー呆れた目で俺を見ているじゃないか!!」 「明らかにお前のせいだろ。」 美少年は半眼でマルスさんを睨んだ。 うん、美少年に同意するのはしゃくだけど、これは明らかにマルスさんのせい。 いい大人なんだからさ、陰から見てないで二歳児に暴言吐く美少年を注意しようよ、マルスさん 「……アイト。マルス叔父さんは普段は真面目堅物人間なんだけど……子どもを目の前にすると、大好きすぎるあまりにすごくハイテンションのウザい人にキャラが変わるんだ。」 だから、恋人がいたためしがないだよとこっそり兄が耳元で囁いた。 「何この、俺が一番悪い、みたいな空気。 一番悪いのフリオだよね!?」 「不服そうだな、チビ」 「さらっと無視された!?」 「実力を過小評価されましたからね」 「あの、二人とも……」 「へぇ、それなら、その実力を見せてもらおうか」 不敵に笑う美少年に猛然と闘志が湧いてくる 「じゃあ、剣で勝負したらいいんじゃないか?」 いつから会話を盗み聞きしていたのか、パパさんが練習用の木の剣を二つ携えて、中から出て来た。 「兄貴、もっと穏やかな方法で───」 「ああ」 「うん」 「よし。ほら、受け取れ。」 放り投げられた剣を受け取り、庭に出て、美少年と向き合う。 「三人とも、俺の話を───」 「ああ、マルス。審判頼むわ。」 「……ハイ」 パパさんに、実に良い笑顔でぽんと肩に手を置かれたマルスさんは思い切り顔を引きつらせた。 うん、パパさんの指がメリメリと良い音を立ててマルスさんの肩に食い込んでいるからね。 マルスさんはコホンと咳払いすると、真面目な顔つきになり、俺たちに向き合った。 「では、禁則事項を───」 「「「さっさっと始めろ(始めて)」」」 「……くれぐれもケガのないように───始め!!」 合図とともに俺と美少年が飛び出す。 剣と剣がぶつかる鈍い音が庭の静寂を打ち破った。

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