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はじまる恋

「ねぇ、教えて下さい。どうしたら俺に振り向いてくれると思います?」  阿川はそう言って葛城に迫った。足下が絡み付くと、彼はそこでテーブルをバンと叩くと、急に席から立ちあがった。 「知るか、さっさと食え……!」 「……!?」  彼がそう言って怒鳴ってくると、顔をキョトンとしなが少し驚いた。そして、周りはテーブルの叩く音に振り返ると彼らの方を見てきた。阿川はその視線に気がつくと、何もなかったような素振りで彼に悪戯する事を止めた。葛城は席から立ち上がったまま怒りの表情で睨んだ。 「ふふふっ、葛城さんは直ぐそうやってムキになるんだから。本当に困った人だな――」 「何……!?」 「今のは冗談ですよ、貴方を困らせたかったんです。それにこんなところで貴方に悪さするのは、人目につきますしね?」  阿川はそう言って彼の方をジッと見るとニヤリと笑った。 「っ、お前……!」 「それより葛城さん、席に座って下さい。それじゃ人目に着きますよ。会社の食堂でもここには誰が見ているか解りません。それに課長や専務や常務や取締役の人達に見られたらまずいと思いませんか?」 「ッ……!」  阿川はそう言ってしたたかに話した。葛城は、彼のずる賢いところにイラッと来ると自分の唇を噛んだ。そしてムッとした表情で席に座った。

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