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はじまる恋
「っ……!だっ、誰に言ってるんだか…――!」
彼の怪しい視線から目を反らすと、止めていた箸を進めた。
「そうなんですよね。なかなか本命の人が振り向いてくれなくて、俺も困ってるんですよ。でも、そう言う所も結構そそられるんです。だから何がなんでも振り向かせたくなりますね。俺、今ある先輩を攻略中なんで――。でもその人が、なかなか振り向いてくれなくて……」
「ッ……!?」
彼はそう話ながらテーブルの上で両手を組むと首を傾げてニコリと笑った。その悪戯な微笑みに葛城は気持ちを煽られた。
「っ、だから何でそんなことを俺にはな……!?」
言い返そうとした瞬間、足下に何か妙な違和感を感じた。その感触は爪先で自分の脛を触られてる感触だった。ズボンの隙間からつつっと相手の爪先が入ってくると葛城はハッとした表情で阿川の方を見た。テーブルの下で葛城の体に触れると足下を器用に動かしてニコリと笑った。
「やっ、やめろ……!」
葛城は小声でやめろと言うと、相手は知らないフリをして惚けた。
「え? なんのことですか?」
阿川は惚けたフリを続けると再び彼の手の甲を指先で然り気無くなぞった。
こっ、こいつ……!
彼の悪ふざけに、今にも怒鳴りそうな雰囲気を見せた。だが、社内の食堂で大声を出したら周囲に注目されると思いそこでグッと堪えた。
「葛城先輩、教えて下さい。どうやったらその人を振り向かせられると思いますか?」
「しっ、知るか……!」
「俺は至って真剣なんですけどね?」
阿川はそう話すとグイグイ攻めてきた。積極的にアプローチされると葛城はますます押された。
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