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はじまる恋

 いい気味だ。調子に乗りやがって、これで少しは懲りただろう。  葛城は廊下を歩きながら悪魔の笑みで笑った。その一方、阿川は食堂でまだ噎せていた。そして水を飲むとそこで落ち着きを取り戻した。 「ああ、油断した。葛城さんも意外にやるなぁ。よーく考えてみれば彼が俺にあんな事してくれるわけないかぁ……」  阿川は一人だけのテーブルでポツリと呟くと、そこでニヤリと笑った。 「――小悪魔だな葛城さん、そんな貴方にますます深みにハマりそうです」  そう言って再びニヤつくと、ますます彼に対して深みにハマったのだった。葛城はそんなことも知らずに、逆に拍車をかけたことに気づくことはなかった。

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